抄録
ユニットケア型特別養護老人ホームにおけるユニット内調理の効果について,入居者の食行動,栄養状態,精神面に焦点を当て,セントラルキッチンにより食事が提供されていたときと比較し検討を行った。調査対象者は,39名で,その内訳は,男性3名,女性36名,平均年齢は84.4±4.4であった。個々の入居者の変化に関するアンケートは,ユニット内調理が導入される以前より働いている介護職員8名,調理員5名を対象に個別面談方式で実施した。また管理栄養士によるケース記録についても分析を行った。入居者のQOLは高齢者多元観察尺度(MOSE)を一部改編して分析を行った。ユニット内にキッチンを設置することは,日常の食事の準備に入居者が参加することを可能にし,入居者同士,また調理員との会話を増加させた。このことは,入居者の食行動,栄養状態,言葉によるコミュニケーション能力および入居者の意志表示において改善をもたらした。居住ユニット内で入居者同士また調理員とともに調理に参加するという行動は,入居者に良い効果を与え,結果,入居者のQOLを向上させるうえでより良いサービスの提供に繋がった。