抄録
食品添加物の酸味料として許可されている乳酸および酢酸がS. enteritidis, E. coli, C. freundii, K. aerogenes,P. vulgaris, E. cloacaeおよびS. liquefaciensの7種の腸内細菌の発育に及ぼす影響をpHと濃度の関係から検討し,次の知見を得た.
1.乳酸はpH5の場合0.05%の添加でS. enteritidis以外の発育を阻止した.しかし,pH7の場合は0.10%でもいずれの菌種とも発育を認め, 0.15%でもS. enteritidis, E. coli, K. aerogenesおよびS. liquefaciensが発育した.
2.酢酸はpH5の場合0.05%の添加でいずれの菌種とも発育を阻止した.pH7の場合は0.10%でK. arogenesが発育を阻止されたが,他の菌種では0.15%でも良好な発育を示した.
3.乳酸および酢酸ともpH5>6>7の順に,腸内細菌の発育に及ぼす影響が強く認められた.
よって,pH5前後の食品に対し,腸内細菌に対する抗菌性を期待して乳酸・酢酸を添加することは,有効なことと推測された.