2010 年 43 巻 1 号 p. 72-78
本研究は,こころの居場所といった用いられ方をする「居場所」について,一人でいるときの居場所(個人的居場所)と誰かと一緒にいるときの居場所(社会的居場所)の機能の違いを,精神的健康との関連から検討するとともに,居場所の定義や意味内容に関する示唆を得ることを目的とするものである。大学生138名への調査の結果,社会的居場所の確保と精神的健康との間には有意な正の相関がみられたが,個人的居場所の確保と精神的健康との間には有意な相関はみられなかった。このことから,個人的居場所と社会的居場所は機能的に異なるものであることが示された。また,社会的居場所の確保と本来感や自己有用感との間には有意な正の相関がみられたが,個人的居場所の確保と本来感,自己有用感との間には有意な相関がみられなかった。このことから,社会的居場所はこれまで臨床場面等で指摘されてきたように,ありのままでいられるという感覚,自分が役に立っていると思える感覚と関連することが示された。