本研究の目的は,うつ病に対する症状認知および援助の有効性の認知が,うつ病における援助要請および援助要請を勧める意図に与える影響を検討することである。大学生362名が,抑うつ症状の記載された事例を読んだ上,症状への認知や援助の有効性,援助要請意図,援助要請を勧める意図,統制変数として抑うつ,ソーシャルサポートを尋ねる質問に回答した。その結果,援助要請意図,援助要請を勧める意図ともに,援助の有効性が最も影響を与えていた。また,専門家への援助要請を勧める意図に対しては,うつ病であるとの認識が正の影響を与えていた。さらに援助要請意図のみ,改善可能性が影響を与えていた。以上から,自身の援助要請意図と援助要請を勧める意図との間には,異なるメカニズムが存在することが示唆された。
本研究は,幼年時代に実父から身体的な暴力を頻繁に受けたクライエントに対する面接過程に関する考察である。本事例においては,クライエントの父親の虐待場面に接近して,支援をしようとしたが,気分が悪くなったり,フラッシュバックの様相をみせることから,容易にカウンセリングの核心部分を行えない状況であった。そこで,交流分析理論における「禁止令からの衝動性をドライバーが和らげる」との理論と,NLPの「恐怖症の即効治療」の技法を用い,父親からの虐待記憶を和らげながら,EMDRを実施した。また,その侵襲性については,SUDS(主観的障害単位)を用いたクライエント自身の評価を参考に,慎重に対処した。結果は,虐待場面を思い浮かべながらEMDRの両側刺激を受けても,侵襲的にならずに,カウンセリングが可能であった。また,カウンセリングの過程が短期で終了し,クライエントの負担が軽減された。
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