カウンセリング研究
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資料
  • 鈴木 孝, 谷 晴加, 佐々木 淳
    原稿種別: 資料
    2023 年 56 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2024/03/31
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    近年,カウンセラーの自己開示は,カウンセリングの治療関係を形成するなど,肯定的な効果が指摘されている。また,クライエントはカウンセラーの自己開示を高く評価し,強く求めている可能性も示唆されている。しかし,クライエントがカウンセラーの自己開示を望む背景にある考えは,明らかにされていない。そこで本研究では,フォーカス・グループ・インタビューを用いた探索的調査を実施した。大学生および大学院生8名を2組のグループに分け,(1)カウンセラーの自己開示を望む場面および内容,(2)カウンセラーの自己開示を避けたい場面および内容,そして(1)(2)の回答に至った理由を尋ねた。その結果,クライエントがカウンセラーの自己開示を望むおもな理由として,クライエントの語りにくさの軽減や,クライエントが一人で悩んでいる状況からの視野の拡大が示された。一方で,カウンセラーの不適切な自己開示によって,クライエントがカウンセラーから否定されるのではないかといった悪影響を懸念する思いも併存していた。カウンセラーの自己開示に対するクライエントの選好および懸念と先行研究による指摘との整合性を検討し,今後の展望について論じた。

ケース研究
  • 高田 紗英子
    原稿種別: ケース研究
    2023 年 56 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル 認証あり HTML

    児童福祉制度に関わる子どもにトラウマ体験やトラウマティックストレス反応が蔓延していることを考えると,トラウマの影響を理解しながら支援にあたるトラウマインフォームドケア(TIC)の視点は非常に重要である。しかしながら,トラウマの影響を正確に評価することは難しいため,出している症状がトラウマ由来のものであると理解されず,誤ったレッテルを貼られることも多い。したがって,TIC の観点から子どもを支援するためには,子どものトラウマ症状を適切にアセスメントすることが不可欠である。本稿ではこれを“トラウマインフォームドな視点に基づくアセスメント”とし,児童養護施設に入所している子どもに適用した事例をもとに考察した。その結果,トラウマインフォームドなアセスメントは子どもだけでなく,子どもの養育を担うスタッフにとってもトラウマ症状の理解につながったことが示された。さらに,心理教育的要素を織り込んだスタッフとの連携が,子どもの行動を十分に理解し,症状の改善を促すことにつながった。最後に,トラウマを抱えた人に対する心理的支援を実施する際に求められる能力である,トラウマコンピテンシーの重要性についても考察した。

ケース報告
  • 栗田 智未
    原稿種別: ケース報告
    2023 年 56 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2024/03/31
    ジャーナル 認証あり HTML

    本研究では,在学中に不本意入学を主訴に来談し,希望する大学への入学とともに終結した後もかかわりをもつことになった学生(以下,CL)との面接過程を通して,退学後のかかわりとその意味を考察した。CLの進路決定から変更の経緯を振り返ると,再受験の決断は,自己主張し自分の意思を尊重することであった。それは親やカウンセラー(以下,CO)から分離・自立することであり,これまでの自己のあり方を大きく揺さぶるものだった。在学中の面接では,大学生をしながら浪人生として受験勉強をする,いわゆる“仮面浪人”としての大学生活の乗りきり方や,受験勉強に取り組むことの難しさがおもな話題だった。CLは実際それらに苦心していたが,自己主張したことや分離・自立の不安や戸惑いを喚起しないように,再受験の意味合いを考えることから遠ざけていたようにも考えられた。自分の意思を尊重することに取り組んだ意義は,退学後のかかわりの中で徐々に内省し洞察されていった。退学後のかかわりは,自己主張して親やCOから離れ自立し,自分の課題に取り組むための整理を行い,新しい環境に慣れるための移行期間だったと考えられる。CLはこの移行期間を元の大学のCOに委ねたのだと考える。

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