抄録
本研究は,中学生を対象とする質問紙調査によって,思春期の身体的発達が心理的適応に及ぼす効果を検討することを目的とした。特に,身体的発達を身体発育の段階と同級生の中での相対的タイミングの両側面からとらえ,個人差の要因として検討することを試みた。合計628名の中学生(男子312名と女子316名)に対し,身体的発達の状況のほか,抑うつ傾向,不安症状,身体的訴え,および攻撃的行動の指標を含む無記名の質問紙を実施した。その結果,男女ともに身体的発達段階と抑うつ傾向や不安症状の間には有意な関連が認められたが,男子では,学年の効果を統制すると一部の関連は有意ではなくなった。女子においては,初潮経験後6か月後から1年未満の生徒の抑うつ傾向と不安症状が高かった。また,発達タイミングとの関連においては,早熟群の女子と晩熟群の男子の抑うつ傾向が高く,これらの結果はおおむね国内外の先行研究と一致する方向であった。本研究の結果より,思春期の心理的適応を検討するにあたり,学年や年齢だけでなく,身体的発達による違いも考慮に入れることの重要性が示唆された。