カウンセリング研究
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精神疾患に伴う身体感覚違和の検討 ―質問紙調査による実証的研究から―
大塚 尚
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2012 年 45 巻 3 号 p. 175-183

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抄録

本研究では,精神疾患を抱えるクライエントの身体感覚違和の疾患群ごとの異同の検討,ならびにさまざまな主観的体験との関連の検討を目的として,精神科クリニックを受診する疾患群372名と,大学生・大学院生184名に対して質問紙調査を実施した。その結果,うつ病群では圧迫感や重感など多くの項目において他群より高い違和が示され,次いで躁うつ病群では非統御感や麻痺・硬直感が健常群より高いことが示された。また,神経症群では不安感が高い傾向が示され,統合失調症群においては健常群に比べて麻痺・硬直感が高い傾向がみられた。身体感覚違和の様相は抱えている疾患によってさまざまな異同があり,そこにはそれぞれの精神活動や病態,存在のあり方が反映されている可能性が示唆された。また,身体感覚違和と他の主観的な体験との間には有意な相関がみられ,精神疾患においても,精神的な面だけで苦痛を感じるというのではなく,心と身体が繋がりあって全身で苦悩や生き辛さを体験していることが示唆された。さらには,カウンセリング場面においても,身体感覚に目を向けることでクライエントの理解に生かしうることが示された。

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© 2012 日本カウンセリング学会
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