2019 年 51 巻 3 号 p. 145-156
臨床心理面接にて,カウンセラー(以下,Co.)がクライエント(以下,Cl.)に対して自己開示をする効果が指摘されており,多くのCo. が自己開示を使用している。その効果については実証研究が蓄積されてきた。しかし,どのような自己開示をCl. が求めているか,そしてCo. がその期待にどう応じるのかは明らかにされていない。そこで本研究では,Co. の自己開示について,Cl. の期待とCo. の実際の応答との差異を検討することを目的とした。心理援助職14名(Co. 役)と大学生53名(Cl. 役)を対象に,Cl. がCo. に自己開示を求めた仮想事例を提示し,Co. 役には自身がすると予想する応答を,Cl. 役には自身がCo. に求める応答を回答させた。Co. の気持ちの開示を求めた仮想事例では,傾聴に徹することが両者に共通する応答として見いだされた。一方で,Co. の見立ての開示を求めた仮想事例では,Cl. 役は解決策の開示を期待したのに対し,多くのCo. 役が解決策を提示しないと予想した。Cl. の期待とCo. の応答が異なる点について,面接における時間軸の観点から考察し,Co. に求められる姿勢を論じた。