2021 年 54 巻 2 号 p. 47-59
本研究の目的は,2つの研究を通じて,小学校高学年の児童を対象に感謝スキル教育を実施し,感謝スキルの獲得およびソーシャルサポートに対する知覚への影響を検討することであった。研究1の対象は4~6年生であり,介入前時点の児童用感謝スキル尺度得点に基づき,上位,中位,下位の3群を分析対象とした。児童自己評定の結果,感謝スキル教育の効果は,下位群の感謝スキルとソーシャルサポートの得点で認められた。他方,上位群の感謝スキルとソーシャルサポートの得点は,実施前よりも実施後において低下した。研究2では,5年生を対象として,感謝スキル教育を実施する介入学級と実施しない統制学級を設定し,児童自己評定による感謝スキル教育の効果を実験的に検討した。分析対象は,介入前時点の児童用感謝スキル尺度得点に基づき,上位群と下位群とした。その結果,介入学級下位群では感謝スキルとソーシャルサポートの得点において,感謝スキル教育の効果が確認された。上位群では得点の変化はみられなかった。以上より,感謝スキル教育は,集団内の,特に感謝スキル下位群の児童の感謝スキルの獲得とソーシャルサポートに対する知覚を促進させる可能性が示唆された。