本研究の目的は,2つの研究を通じて,小学校高学年の児童を対象に感謝スキル教育を実施し,感謝スキルの獲得およびソーシャルサポートに対する知覚への影響を検討することであった。研究1の対象は4~6年生であり,介入前時点の児童用感謝スキル尺度得点に基づき,上位,中位,下位の3群を分析対象とした。児童自己評定の結果,感謝スキル教育の効果は,下位群の感謝スキルとソーシャルサポートの得点で認められた。他方,上位群の感謝スキルとソーシャルサポートの得点は,実施前よりも実施後において低下した。研究2では,5年生を対象として,感謝スキル教育を実施する介入学級と実施しない統制学級を設定し,児童自己評定による感謝スキル教育の効果を実験的に検討した。分析対象は,介入前時点の児童用感謝スキル尺度得点に基づき,上位群と下位群とした。その結果,介入学級下位群では感謝スキルとソーシャルサポートの得点において,感謝スキル教育の効果が確認された。上位群では得点の変化はみられなかった。以上より,感謝スキル教育は,集団内の,特に感謝スキル下位群の児童の感謝スキルの獲得とソーシャルサポートに対する知覚を促進させる可能性が示唆された。
本研究は,キャリアの浅い対人援助職者の職務における主観的な負担感を明らかにすることを目的に行われた。抽出されたカテゴリーを一事例に当てはめ,援助職者の負担の実際を示すため,日本版バーンアウト尺度と半構造化インタビューを用いた質的分析を行った。その結果,3つの大カテゴリーから成る9つの疲労体験のカテゴリーが抽出され,対象者の語りの有無を一覧表に示した。結果として,援助職者の疲労体験は[個人内の疲労]のみが優位な者,[個人内の疲労][対人関係上の疲労]の両方が優位な者に大別された。また,同程度のバーンアウト尺度得点の者でも,カテゴリーの該当や優位になる大カテゴリーが異なっており,個別性があることが示された。さらに,得られたカテゴリーをA氏の事例に当てはめた結果,多くの疲労体験が同時期に重複して体験されることで葛藤していること,長期にわたり同内容の疲労体験が繰り返されていることが負担となっていることが示された。これらのパターンやカテゴリーの該当のしかたといった各援助職者の特徴を把握し,それに応じたバーンアウトの予防法や介入法を検討する必要性が示唆された。
本研究の目的は集団を対象とした援助要請に焦点を当てたカウンセリングの介入方法および効果測定方法を展望し,今後の課題を示すことである。2000~2020年に出版された国内外の援助要請への介入研究に関する文献217本から適格基準を満たした文献36件(40研究)を対象に,研究デザイン,介入対象集団の特徴,介入方法,介入効果測定方法を展望した。介入方法について,介入の焦点を援助要請の過少性,過剰性,非機能性に分類した結果,過少性への介入が最も多いことが明らかになった。また,介入効果測定について,援助要請態度,認知(期待感・抵抗感),意図・意志,行動の量,行動の質の5つに分類して展望した結果,信頼性,妥当性のみでなく反応性も支持された尺度を作成することが必要であると結論付けられた
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