抄録
本研究は浙江省杭州市を対象として、大都市の不良住宅地区の形成のプロセスについて考察している。この調査に先行して実施した吉林省長春市、雲南省昆明市の調査によって、80年代の急激な都市化以降に形成された不良住宅地区は、流動人口の流入により過密化した老朽化住宅地区、都市化した農村集落、スプロール現象により郊外に無計画に建設された住宅地区、そして鉄道沿線や河川敷に現れるスクオッター地区に分類されると考えられた。この視点を共有しつつ杭州の都市居住について調査、分析した結果、80年代に「盲流」と呼ばれて社会問題化した当時に駅前広場に寝起きしていた多くの人々が、やがて戸籍制度(都市居住者の食糧や住宅の配給まで規定していた制度)から逃れやすい駅周辺の劣悪な戸建て住宅地区を中心として定住しはじめ、その後戸籍制度の規制緩和とともに家賃の安い集合住宅等へと居住域を拡大していったのではないかと考えられた。90年代以降には、中心市街地にある老朽化した住宅地区も彼等の居住域となり、そして、90年代後半からは郊外のスプロール地区や市街化されつつある農村集落が中心的な居住地になっていったことが明らかになった。