今日,公共事業を遂行するにあたり,当該事業に関わる地域住民から意見を聴取することは不可欠となっている.しかしながら,地域住民全員の参加の上で議論を行うことは不可能である.当該事業に関するワークショップや検討委員会に住民代表に参加してもらい意見を聴取することは可能であるが,出された意見が広く市民の意見を本当に代表している保証はない.そこで,地域住民へアンケート調査を行ない,住民代表が参加しているワークショップや検討委員会にその結果を示して議論を重ねることで,幅広い意見を取り入れながら議論の内容を深めることができよう.本研究では,熊本県八代市の麦島地区で都市計画道路建設中に発掘された城跡の保存の是非をめぐる住民アンケート調査にCVMを採用した検討委員会での議論の経過と合意に至る経過について考察している.この事例から,現行計画や計画変更に伴い生じる実費用や利用効果だけでなく,外部経済や外部不経済の存在を関係者に認識してもらうことが,対立関係に協調をもたらす上で有効であるとの示唆が得られた.そして,この事例を通じてCVMは対立問題の解消の有効なツールの一つに成り得ると確認できた.