本研究は、フランスにおける都市圏交通政策を、国レベルでの計画コントロールシステムとして捉えることで、各都市圏の計画が高い実効性を持っている要因を明らかにしようとするものである。具体的には、各政策の、都市圏交通政策全体の中での位置づけを行うとともに、その枠組みの中で実際に地方がどのような条件のもとで計画に関する意思決定を行ったかを示している。結論としては、フランスでは国がLOTI(国内交通基本法)を策定することでPDU(都市圏交通計画)の向かうべき理念を明らかにし、政策に関する全ての責任を負う組織であるAOTU(都市圏交通機構)を設置させて計画策定を義務づけ、VT(交通税)に代表される自由度の高い財源制度システムと法定の住民参加制度を構築することで、政策実施の枠組みを作った。それに対し、地方はその枠組みの中で、各地域に固有の問題をルールに則って解決することを大きな役割としているのである。このように国と地方の間で明確に役割を分担したこと、特に国による計画枠組みの設定こそが、フランスにおける地方の交通政策がスムーズに進むようになった大きな要因と考えられる。