本稿は、地方都市の中でも近年、商業環境が大きく変化している宇都宮市の中心市街地を対象として、商業と業務を合わせた空き床の実態や課題について明らかにし、そこで用いる各空き床指標について考察することを目的とする。最初に、宇都宮市中心市街地の近年の状況を概観した上で、階数、規模、従前用途などの空き床に関する特徴や傾向を分析した。そして、空き床の状況を考慮しつつ、空き床に関する指標を用いた通りごとの考察を行うとともに、地域ごとの空き床度を示す「まちの空室率」の試算を行った。結論として、当該中心街における空き床は、大型店の閉店に加えて事務所などの業務機能の退去によるものも相当数あること、また、空き床は貸す意思のある空き床の他に、市場に出ない空き床が存在し、その発生は地区で偏りがあることなどの知見を得るとともに、本研究で提案し取り上げた各空き床指標についての考察を行った。