都市計画論文集
Print ISSN : 1348-284X
第39回学術研究論文発表会
セッションID: 96
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地方環境税導入のための環境便益移転可能性の実証分析
*吉田 謙太郎
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抄録

本研究では、神奈川県が実施を検討している森林保全及び生活排水処理対策目的の水源環境税を基礎として、神奈川県と東京都においてほぼ同一の評価フォーマットを用いた環境評価を実施した。便益評価額及び便益関数の同等性比較を行うことにより、便益移転可能性を検証した。その結果、水源環境税の便益評価においては、CVMと選択モデルのどちらを用いたとしても、抵抗回答を除外した場合に便益移転が可能であることが実証された。これまでに、CVMのみによる便益移転あるいは選択モデルのみによる便益移転を実証した研究はあるが、両者を同時に比較した研究結果はきわめて少ない。また、CVMにおいて便益移転可能性は実証されたものの、スコープテストをパスできなかったという結果が得られた。一方、選択モデルについては、回答者が政策水準の違いに適切に反応したことが分析結果から明らかである上に、便益移転可能性があることも明らかとなった。現在の環境評価研究における最大の論争点の1つであるCVMと選択モデルのどちらが適切な表明選好法として利用可能であるかという問題への解答を探る上でも重要な実証研究の成果が得られた。

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© 2004 公益社団法人 日本都市計画学会
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