本報告は多数の観光客が存在する京都市の、特に文化財が集中する東山区を対象として、行政管轄下にある空間把握に有効な標識の視認性に関する実態調査を行い、現状の問題点を抽出し今後の改善案を示したものである。京都市が管轄する空間把握に関連する標識は、消防局・産業観光局・建設局の3部局で維持管理されているが、災害時の避難場所を誘導する標識の設置数や設置位置に問題があり、適切な誘導が行われていない。主要道路に密に設置された視認性の高い道路標識などの、現存する他の標識を有効利用した、部局を超えた配置計画を行う必要がある。またいずれの標識も夜間および無灯時の標識の視認性が不十分である。高齢者は広域避難場所関連の標識を視認できず、その他の標識の視認距離も短い。外国語表記の文字の視認距離も短く国際都市としては問題がある。配置図の中の現在地を示す文字は主要文字に比べて遙かに短く、地図上の現在位置を把握しにくい。これらの問題を解決するには、風化による影響を最も受けにくい文字寸法を重点的に取り上げ、標識のデザインを見直す必要がある。また広域避難場所を示すピクトグラムを積極的に利用することも効果的である。