本研究は,水害に対する地域防災力の向上を目指すために,水害リスクマネジメントの活用に着目し,ワークショップ形式の水害リスクコミュニケーション手法の提案とその実践的研究を行った.熊本市壺川校区を対象としたケーススタディでは,降雨に伴う内水氾濫や坪井川の洪水氾濫に対する水害リスクコミュニケーションを実施し,ワークショップ参加に伴う参加者の防災意識の変化をアンケート調査した.また,実際に校区住民が参加した水害避難訓練を実施し,仮想水害時の住民の避難行動に関する基礎データを取得・分析した.これらの結果より,水害リスクコミュニケーションが,“住民自らが地域を守るという意識の高揚”に有効な手法となることを示した.また,今回のように小学校校区という空間的に数km四方と限定された地域内であっても,想定される内水・洪水氾濫時の氾濫水の挙動は,場所によって大きく異なり,地域の実情に応じたよりきめ細かな防災・減災対策が必要となることが示された.