本研究では,平成16年10月に発生した豊岡市水害における被災家計の実態調査結果に基づき,家計の流動性制約が復旧過程に及ぼす影響について分析する.本研究では,家計の復旧過程を多段階指数ハザードモデルよりモデル化し,マルコフ推移確率により復旧過程を推計する.まず,家計の復旧状態を複数の復旧度で定量化するとともに,家計の流動性制約を考慮した上で,時間の経過により復旧が進展する過程をハザードモデルで表現する.その上で,一定期間を隔てた時点間における健全度の推移関係を表すマルコフ推移確率を指数ハザード関数により表現する.分析の結果,流動性制約に直面している家計では,流動性制約に直面していない家計と比較して,より長期間の復旧過程の遅延が生じている状況が明らかとなった.