抄録
本研究は、ミクロネシア島嶼パラオ共和国の集落の文化的景観の実証的な解明を目的として、バベルダオブ島の伝統的集落であるアイライ集落を事例に研究を行った。その結果、以下の三点が明らかとなった。第一に、Mekesokes、Chereomel、Mesei、Sersなどのアグロフォレストリーが、住戸や歴史的構造物のある集落中心部を取り囲み、その周囲に、湿地林、高地林、マングローブ林、石灰岩林などの人為的介入度の低い森が微地形に沿って展開している。第二に、アグロフォレストリーは、園芸・農耕・育林などの植物栽培を通した人々の自然への積極的な働きかけによって維持され、かつ、周辺環境の自然資源も植物採集や漁労や狩猟を通して広く利用されている。第三に、バベルダオブ島における伝統的集落の文化的景観とは、微地形に即した土地利用、およびそこでの人々の生活・生業の結果導かれる微細な景観ユニットの集合体として成立している。これらの景観ユニットは、島独自の自然環境、およびそれと密接に結びついた人々の暮らしや文化を含め、長期的視野で景観をマネジメントしていく上での、計画原単位として有効なものであると考えられる。