2022 年 33 巻 p. 23-28
地域空間の中で多様な主体の参加や協力を得ながら展開するアートプロジェクトは、しばしばまちづくりの手法として活用される。名古屋市中川運河では、運河再生を目指して現代アートへの助成事業が実施されているが、港湾区域である運河は住民主体の地域まちづくりの活動範囲からは切り離されている。住民代表者を対象に、運河とアートに対する認識を問うアンケート調査を実施したところ、運河は身近な存在であること、地域との関係性認知や尊重意識、活用意向も高いことが分かった。また、アーティストや作品への接触経験によってアートプロジェクトの効果に対する認識が高まる傾向がみられた。一方で、アーティストや作品への接触経験の有無と運河に対する認識には有意な差は見られなかった。地域活性化を目指して政策的に実施されるアートプロジェクトにおいては、多様な考えを持つ地域住民があることをふまえ、その効果をアート以外の分野にも広げていく橋渡し機能が必要である。