抄録
2004年の文化財保護法改正時に導入された重要文化的景観(重文景)制度には景観行政団体ではない自治体から選定申出ができず、一部の文化的景観の保全が図れないという課題がある。その補完を目的に京都府は京都府選定文化的景観(府文景)制度を設けた。そこで本研究では府文景10件のうち向日市と和束町を対象に景観保全の担い手に着目して、府文景制度の効果と課題を明らかにした。両市町では住民と自治体が連携し継続的な保全活動を実施しており、地域ブランド化や重要文化的景観制度の補完といった効果が確認された。特に和束町では府文景選定を契機に重文景選定を見据えた保全活動が展開され、本制度が重文景へのステップとしても機能していることが示された。