抄録
背景:Fontan術は先天性心疾患の術式であり術後成績は世界的に劇的に改善している.心肺運
動負荷試験(CPX)は総合的な心肺機能評価法として極めて優れており予後と密接に関わってい
るが,呼吸エクササイズによるCPXの改善は今まで報告されていない.
実践報告の目的:Fontan患者における呼吸エクササイズがCPXを改善させるかを確かめること
とした.
対象者:25歳,女性.身長168cm,体重56.5kg,運動歴なし.既往歴はLt modified B-T shunt術
,Glenn術,Coil embolization後であった.
測定環境:2018年8月8日から月1回の頻度で小児科外来病棟にて小児科医の監視下のもと呼吸
エクササイズを指導した.介入期間中はパナソニックシステムソリューションズジャパン株式会
社のクラウドサービスを用いてオンライン上でエクササイズの実施状況を管理した.種目,回数
,セット数は面会時に伝え,呼吸エクササイズ実施のタイミングは患者のペースで行なった.
測定手順及び分析方法:エクササイズの成果を判断するために,介入前(2018年1月19日)と介入
後(同年11月9日)にCPXを実施した.
結果:8月から11月にかけて4回の監視下でのエクササイズ指導と60回のホームエクササイズ
をオンライン上で管理した.PeakVO2(17.2→23.2ml/min/kg),AT V-Slope VO2(10.5→12.9),VE
vs.VCO2 slope(40.6→35.7),安静時心拍数(84→73bpm)に改善が見られた。
考察:予後規定因子であるPeakVO2の改善はWassermanの歯車によって説明することができ,心
機能,骨格筋の改善が難しいFontan患者でのCPX改善は,呼吸エクササイズによる効果であると
考えられる.
【現場への提言】
多くの先天性心疾患患者が成人になることができ,我が国では既に400,000人以上が成人患者と
なっている.今後は医療の発達により健常者のトレーニング指導のみならず,適切な病態理解を
持ってダイバーシティに指導できる人材が求められる.