抄録
背景:ハンドボール選手は、シュートの際利き手と逆の脚で踏み切ることが多いことから、踏
み切り脚と非踏み切り脚とでは異なった神経筋の適応が生じている可能性がある。踏み切り
脚・非踏み切り脚の神経筋の適応に左右差があるのであれば、トレーニング効果の生じ方や両
脚での力/パワー発揮能力に影響を及ぼす可能性がある。実践報告の目的:第1の目的は、踏み
切り脚と非踏み切り脚におけるトレーニングによる片脚リバウンドジャンプ(RJ)遂行能力向
上度合いの相違を明らかにすることであり、第二の目的は、両脚RJ遂行能力と片脚RJ遂行能力
における向上度合いの関係性の左右差を明らかにすることである。対象者または対象チーム:
2018年1月~7月にかけて週2~3回継続的に高強度の筋力・筋肥大トレーニングを主要なトレー
ニング目的として行っている学生女子ハンドボール選手14名(身長:166.4 ± 5.3cm,体重:
61.8 ± 5.9cm,年齢:20.3 ± 0.9歳)を対象とした。測定環境: 1月及び7月に体育館にて
測定した。測定手順及び分析方法:選手は、両脚および片脚リバウンドジャンプ(RJ)をそれ
ぞれ10回ずつ行った。光学測定システム(MICRO GATE社製、OPTOJUMP)を用いてRJの接地時間
と跳躍高(滞空時間から推定)を測定し、RJ 指数(RJI)(跳躍高/接地時間, m/s)を算出し
た。片脚RJの各変数から伸び率を算出し、各伸び率の平均値の左右差を対応のあるt検定を用
いて分析した。また、両脚RJと片脚RJにおける各変数の伸び率の相関係数を、踏み切り脚、非
踏み切り脚それぞれで算出した。結果:t検定の結果、踏み切り脚のRJI(p = 0.045)及び跳
躍高(p = 0.011)は、非踏み切り脚よりも有意に高い伸び率を示した(踏み切り脚vs非踏み
切り脚:RJI:18.4±27.8 vs 8.1 ± 19.7%, 跳躍高:20.2 ± 30.9 vs 9.0 ± 19.6%)。RJI(r
= 0.668, p = 0.009)と跳躍高の伸び率(r = 0.550, p = 0.042)において、両脚RJと踏み切
り脚の片脚RJの間には有意な正の相関が認められた。しかし、両脚RJと非踏み切り脚の片脚RJ
との間にはいずれにおいても有意な関係性は見られなかった。考察:本研究の結果、非踏み切
り脚より踏み切り脚の方がRJ遂行能力が有意に向上したことが示された。また、両脚RJ遂行能
力は踏み切り脚による片脚RJ遂行能力の伸び率とのみ有意な相関がみられた。これらの結果か
ら、両脚によるパワー発揮は非踏み切り脚よりも踏み切り脚によるパワー発揮の影響を受けや
すく、両脚による下肢トレーニングの効果も踏み切り脚により生じやすい可能性があると考え
られる。現場への提言:下肢において、左右どちらかの偏ったトレーニング効果を防ぐためには、
両脚を用いたトレーニングのみでなく、片脚のみを用いたトレーニングも多く取り入れるべき
である。