日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第8回日本トレーニング指導学会大会
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ポスター発表
幼児の運動経験の有無とコーディネーション運動が走能力へ与える影響
*井川 貴裕*岡崎 祐介
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p. 51-

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抄録
【目的】幼児の運動能力は、その能力に類似した動きの有無や量が影響を与えると報告されて おり、運動経験が幼児の運動能力向上に重要であると考えられる。そこで本研究の目的は、幼 児の運動経験の有無とコーディネーション運動が走能力へどの様な影響を与えるのかを検討す ることとした。 【方法】測定環境:測定はS大学体育館にて、3か月間の運動教室の前後(Pre、Post)に実施し た。運動教室では、幼児の総合的な運動能力向上を目的として、支持運動、回転運動、跳躍運 動、リズム運動、バランス運動を偏りなく行えるように作成したプログラムを実施した。測定 参加者:S大学で実施している運動教室に参加する幼児26名(身長105.7±5.2㎝、体重18.1±2.5 ㎏、年齢4.7±0.5歳)を対象とした。運動教室や習い事などの運動経験の有無により運動経験 有群11名、運動経験無群15名に分類した。各群の身体組成に有意差は見られなかった。測定手順: 測定項目は、10m走およびプロアジリティとし、Witty光電管を用いて測定を行った。プロアジ リティは、現法の5m間隔を幼児用に2.5m間隔に変更して実施した。測定を行うに当たって指導 者が見本を見せながら説明し数回練習させた後、本試技2回を行わせて良い方の記録を採用し た。統計分析:繰り返しのある二元配置分析により各群の運動前後の測定値を比較した。また ピアソンの相関係数により各群のPreおよびPostの10m走とプロアジリティとの関係性を検証し た。 【結果】二元配置分散分析の結果、プロアジリティにおいてPostはPreに比べ有意に速かった (F=15.46,p<0.01)。交互作用が認められ(F=4.23、p<0.05)、運動経験無群のPost はPreに比 べ有意に速かった(Pre: 6.23±0.99秒→Post: 5.36±0.51秒、p<0.01)がその他の項目で有 意差は見られなかった。相関分析の結果、運動経験有群はPre、Post共に10m走とプロアジリティ 間に有意な正の相関関係が見られた(Pre: r=0.57,p<0.05、Post: r=0.83,p<0.05)。運動経験 無群おいては、Preにおいて10m走とプロアジリティ間に有意な相関関係が見られなかったが、 Postでは10m走とプロアジリティとの間に有意な正の相関関係が見られた(r=0.85、p<0.05)。 【考察】運動経験の有無により切り返しを含んだ走能力に対して効果の生じ方が異なる結果と なった。さらに、運動経験無群において運動教室前後で10m走とプロアジリティとの関係性が 異なった。プロアジリティはスプリントと相関が高い項目であるが、幼児期では軸足でのター ンや重心移動が上手く行えず、減速に大きな時間を要することが確認されている。運動経験無 群は、コーディネーション運動を経験することにより、切り返し時の身体操作や減速動作がス ムーズに行えるようになり10m走が速ければプロアジリティが速いという関係性が見られるよ うになったと考えられる。 【現場への提言】幼児期の運動能力向上には、運動経験が重要な要素であると考えられる。幼 児期に多様な動きを経験することで、身体を巧みに動かす能力が向上し、複雑な動作をスムー ズに行えるようになる可能性がある。
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