抄録
【目的】本研究の目的は、ロープを使用した高強度インターバルトレーニング(high intensity interval training : HIIT)において、ロープの重量や振る速さなどの運動負荷を
調節することで、有酸素性・無酸素性のエネルギー代謝にどれほど影響を与えているのか明ら
かにすることである。
【方法】対象は運動器疾患を有していない健常大学生20名とした。Cpex-1(呼気ガス分析装置)
を使用した自転車エルゴメーターによる漸増運動負荷試験を行い、最大心拍数(HRmax)、最大
酸素摂取量(VO2max)を測定した。
ロープを使用したHIITは、最も一般的な交互に腕を上下に振る動きでの運動(オルタナティ
ブウェーブ)を行った。“運動を20秒行い、その後10秒の休息を挟む”これを8セット行うこと
とした。ロープを振るスピードを100bpm・60bpm、ロープの重量を7kg・13kgの4つのトレーニ
ング群をつくり、1週間以上の期間を空け、ランダムに全対象に行った。ロープトレーニング
中もCpex-1を使用し呼気ガス分析を行い、終了後に血中乳酸濃度(Lac)を測定し比較検討した。
【結果】60bpm7kg群ではHRmaxに対して78.98%の負荷であり、VO2maxに対して66.61%の負荷
であった。ex終了後のLacは2.42±0.41(mmol/l)であった。60bpm13kg群ではHRmaxに対して
92.52%、VO2maxに対して79.98%、Lacは3.45±0.86(mmol/l)であった。
100bpm7kg群ではHRmaxに対して89.14%、VO2maxに対して80.19%、Lacは3.94±1.04(mmol/l)
であった。100bpm13kg群ではHRmaxに対して95.35%、VO2maxに対して91.99%、Lacは5.32±1.12
(mmol/l)であった。HRmax、VO2maxは各群において統計学的有意差は見られなかった。Lacは
60bpm7kg群と100bpm13kg群において有意差がみられた(P<0.05)。
【考察】ロープを使用したHIITにおける心肺機能への負荷は、全トレーニング群でHRmaxの70%
を超える負荷であり強度の高いものであった。60bpmのロープトレーニングでは乳酸蓄積開始
点(OBLA)を超えることはなかったため、60bpmの群は有酸素性能力の向上に適した運動だと
考えられる。60bpm13kg群と100bpm7kg群では後者の方が、無酸素性のエネルギー代謝に影響を
与えていた。100bpm13kg群ではOBLAを超えたため、有酸素性能力と無酸素性能力の両方の向上
に適した運動だと考えられる。
【現場への提言】ロープを使用したHIITは有酸素性のエネルギー代謝に与える影響は高く、強
化できる可能性がある。無酸素性のエネルギー代謝の強化には、ロープの重量と振る速さのコ
ントロールが重要であることが確認できた。