抄録
【目的】疲労感から運動種類や強度を適切に選択し、怪我やパフォーマンス低下の予防を目的
とする。
【方法】
実験または測定環境:日常生活での疲労感や爽快感に関する質問項目を含む自記式のアンケー
ト調査を継続して7日間自宅にて実施し、運動を行った際には運動前後の心理状況や身体状況
をSemantic Differential Scale(以下、SD)法と疲労度をVisual Analogue Scale(以下、
VAS)法を用いたアンケート用紙に回答してもらい、血圧と血中飽和酸素濃度の測定を行った。
実験または測定参加者:被験者は週に1回以上の頻度で教室やサークルにおいて運動を行って
いる20代から70代までの合計58名(男性23名、女性35名)、平均年齢55.1歳(男性49.5歳、女
性60.8歳)であった。
実験または測定手順及び分析方法:調査は7日間の連続とし、運動を行った際の内容と時間を
記録票に記入する方法を用いた。日常生活の身体活動はSD法を用いて回答を得た。
統計分析:5因子を仮定して最尤法・Promax回転による因子分析を行い、因子負荷量の低い5項
目を削除し、残りの19項目から5つの因子を抽出し、それらの因子名を第一因子「心理的疲労」、
第二因子「身体的疼痛」、第三因子「充実感」、第四因子「呼吸亢進」、第五因子「長期的倦怠」
とした。主観的疲労度は、爽快感と身体的疲労感の回答時間帯を1回の運動時間が1時間未満の
運動直後とその日の就寝前、1時間以上の運動直後とその日の就寝前、運動を行っていない日
の就寝前5つの条件に分けて相関関係を分析した。
【結果】因子分析から抽出した5因子では、第一因子「心理的疲労」と第二因子「身体的疼痛」
の平均値は運動後に下がり、第三因子「充実感」第四因子「呼吸亢進」第五因子「長期的倦怠」
の平均値は上がっていた。また、爽快感と身体的疲労の相関関係の分析では、5つの条件下の
うち4つでピアソンの相関係数0.478~0.615とやや相関があるという結果であったが、1時間未
満の運動直後は0.393と弱い相関しかみられなかった。
【考察】1時間未満の運動時間の運動直後の方が心理的疲労と身体的疲労との違いを認識しやす
く、軽く息がはずむ程度の運動強度が腰痛や関節痛をやわらげ、精神的にもスッキリしてやる
気も出る。
【現場への提言】
運動後に軽く息がはずむ程度の運動強度を1時間以内で行うことで、心理的疲労も身体的疲
労や疼痛も軽減すると考えられる。トレーニングの中でも1時間以内に時間を区切ってトレー
ニング内容を変更し、主観的疲労度を確認することが怪我の予防やパフォーマンスの向上につ
ながるのではないかと考えられる。