抄録
【目的】近年、足趾のアライメントに異常のある人が増加する傾向にあり、こうした異常
は競技パフォーマンスの低下や、運動時の足部の疲労増大などを引き起こす。今回の研究
では、バスケットボール選手の足趾のアライメント異常を調査するとともに、足趾把握筋
力も足趾のアライメント異常を反映する指標になるのかを検討することを目的とした。
【対象者】バスケットボール部に所属する男子大学生17 名(身長172.5±3.48cm、体重65.5
±8.63kg、足のサイズ26.8±0.81cm)、男子高校生26 名(身長172.5±7.63 cm、体重62.6
±6.83kg、足のサイズ27.2±1.14cm)、計43 名で、測定時に下肢の外傷・疼痛がない者を
対象とした。
【方法】足型の測定には、デジタル足圧測定器(フットビュークリニック、NITTA 社)を
用いて、立位静止時の足圧分布を開眼にて20Hz で20 秒間記録した。
足趾アライメント異常の一つである浮き指に着目し、その判定基準として、矢作ら(2004)
が考案している「浮き趾スコア」を使用した。これは、左右10 本の足趾に対し、完全接地:
2 点、接地不十分:1 点、接地していない:0 点、として、20 点満点で合計10 点以下のス
コアを浮き趾と判定する方法である。足趾把握筋力の測定は、足指筋力測定器(竹井機器
工業社)を使用して、椅子座位姿勢で、把持バーを一番握りやすい位置に設定し、手を胸
の前でクロスした状態で最大努力により2 回測定し、高い方の値を採用した。正常趾群と
浮き趾群による差は対応のないt 検定を用いた。浮き趾スコアと足趾把握筋力の関係はピア
ソンの相関検定を用いた。いずれもp<0.05 を有意とした。
【結果】浮き趾と判定されたのは20 名(46.5%)であった。その中でも第1・第2 足趾の
みの接地が見られた対象者も4 名(9.3%)いた。足趾把握筋力は、非浮き趾群23 名の平
均で右足が21.4±5.30 ㎏、左足が20.1±5.50 ㎏、浮き指群20 名の平均で右足が19.5±3.72
㎏、左足が20.1±4.05 ㎏だった。非浮き趾群と浮き趾群の間において足趾把握筋力の有意
な差は見られなかった。浮き趾スコアと足趾把握筋力間における有意な相関関係も認めら
れなかった。
【考察】今回の対象者では、浮き趾者が半数近くに見られかなり多いことが分かったが、
足趾把握筋力の強弱と足趾のアライメント異常とは関連していなかった。これには足趾長
や足長、下腿筋力等の影響が考えられ、今後これらの項目で足趾把握筋力を標準化した検
討が必要である。
【現場への提言】足趾把握トレーニングなどによる足趾のアライメント改善効果などが報
告されていることから、トレーニング前後に個人レベルでの足趾把握筋力を測定し、デー
タを活用していくことが勧められる。