日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第10回日本トレーニング指導学会大会
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口頭発表
介護者(ケアラー、准ケアラー)に焦点を当てた新しい運動支援 ~男女による心理的効果の違い~
*小菅 亨長谷川 龍成金丸 雄介下和田 翔平岡村 知明越川 雅史松本 揚
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p. O03-

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抄録
【トレーニング現場へのアイデア】 他者への支援の多忙さによって、自身の健康に目を向けることのできないケアラー、准 ケアラーに対して、運動する機会を与えることは、本人への健康課題改善に寄与すること はもちろんのこと、「被支援者に対する支援の機会及び支援期間の延長」、「被支援者のサ ポートのより一層の充実」など被支援者に対するメリットも提供できると考えられる。ま た、その先では医療・介護保険費の削減など日本社会に貢献する可能性がある。 背景:ケアラー健康状態調査(日本ケアラー連盟)では、東京都杉並区に住むケアラーの 約7 割が身体的不調を抱えており、ケアラー男女比は30.6:69.4 と報告されている。一 般的に運動器不調に対処するには、健康体操が有効な手段とされているため、ケアラーに 対しても同様の運動介入により、身体的かつ精神的不調解消の一助になる効果が見込まれ る。また、先行研究においても人数比率は女性が高いため、ケアラーへの運動介入を男女 間で比較することで、その女性多数の現状改善に寄与する可能性がある。 実践報告の目的:ケアラーに対し運動機会を提供、男女別心理効果を調査することで、ケ アラーに対する運動支援効果、女性多数の現状改善に係る知見を得ることを目的とする。 対象者:2021 年6 月から9 月までに開催された、ケアラートレーニング会に出席したケア ラー、准ケアラー計23 名(年齢35±1.2 歳、男性10 人、女性13 人)であった。 測定環境:実施場所(レンタルスタジオ、地域柔道場)で介入方法は、谷本らが推進する サーキット式コンバインドトレーニングを模倣した方法を用いた(無酸素運動30 秒、有 酸素運動60 秒を8 セット実施し、4 セット終了時に60 秒間休息時間を挟んだ) 測定手順及び分析方法:参加者の運動による心理的効果について調査するため、日本語版 主観的運動体験尺度(SEES-J)を用いて、運動前後に男女間の4 標本で比較した(運動前 後:対応のあるt 検定、男女間:対応のないt 検定)。 結果:男女別運動前後、男女間SEES-J すべてに有意差は認められなかった。 考察:本研究では、ケアラーの男女比が女性多数になっている現状改善と身体的精神的不 調改善への知見を求めて比較した。林が高齢者を対象に運動を行わせた調査では積極的安 寧因子(PWB)と疲労感因子(FAT)の増加が認められていたが、今回ケアラー男女間、男 性のみ、女性のみでは有意差が認められなかった。この結果には、ケアラーの多忙な生活 様式、ケアラーへの支援が少ない現状から疲労度が高く、運動前後でFAT に差が認められ なかったと考えられる。今回の研究結果から今後は、ケアラーの対象者数を増やして検討 することが必要であると考えられる。
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© 2021 日本トレーニング指導学会
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