抄録
【トレーニング現場へのアイデア】
本研究の結果から、大学野球投手に下肢トレーニングを実施させる際は、左右差を考慮
すべきと考えられる。また、球速に関連があるフィールドテストとして、両脚立ち三段跳
びの有効性が示唆された。
【目的】
本研究は、軸脚と比べ踏込脚のジャンプパフォーマンスが高く、且つ球速と相関がある
のか否かを明らかにすることを目的とした。
【方法】
大学野球投手18 名(年齢:19.4±1.0 歳,身長:175.5±5.0cm,体重:76.4±6.9kg,最
高球速:132.9±6.1km/h,平均球速:128.1±5.4km/h)を対象とし、測定を別日で2 日実
施した。1 日目の測定として3 種目のジャンプパフォーマンス測定(両脚立ち三段跳び,
踏込脚および軸脚の片脚立ち三段跳び)を行った。2 日目の測定は、球速測定(1 イニン
グ15 球×9 イニングの計135 球のストレートのみ全力投球)を実施した。球速はスピード
ガンを用いて測定し、全135 球の最高値を最高球速、平均値を平均球速とした。
【結果】
対応のあるt 検定の結果、軸脚と比較し踏込脚の片脚立ち三段跳びのパフォーマンスは
有意に高値を示した(p=0.019,cohen's d=0.344)。また、Pearson の積率相関分析の結
果、最高球速と両脚立ち三段跳びのパフォーマンスとの間に有意な正の相関関係が認めら
れた(r=0.644,p=0.004)。加えて平均球速と両脚立ち三段跳びのパフォーマンスとの間に
も有意な正の相関関係が認められた(r=0.671,p=0.002)。一方、最高球速および平均球速
と軸脚、踏込脚それぞれの片脚立ち三段跳びのパフォーマンスとの間には有意な相関関係
は認められなかった。
【考察】
投球時、踏込脚では負の仕事が大きくなるため、軸脚と比較し片脚立ち三段跳びのパフ
ォーマンスが高値を示したと考えられる(陰山ら, 2015)。一方、片脚立ち三段跳びと球速
との間に相関関係が認められなかったことから、軸脚および踏込脚それぞれの片脚立ち三
段跳びは投球パフォーマンスと関連がないことが予想される。