日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
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Print ISSN : 2433-7773
第10回日本トレーニング指導学会大会
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口頭発表
片脚ドロップ着地における着地方向の違いが衝撃発生時の下肢の運動学的・動力学的パラメータに及ぼす影響
*中畑 温貴笹壁 和佳奈峯田 晋史郎下河内 洋平
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p. O05-

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抄録

【トレーニング現場へのアイデア】ACL 損傷リスクを高める後方重心や膝関節伸筋群の負担が 大きな着地動作の改善には、後方への着地トレーニングを行うことが有効である。一方、外側 への着地動作は膝外反角度を高める傾向があるため、外側への着地トレーニングは膝外反角度 を増大しないように意識しながら着地トレーニングを行うことが重要である。 【目的】身体重心が足関節よりも後方に位置した状態で行う着地動作は、ACL 損傷などスポー ツ傷害を引き起こすリスクを高めることが報告されている。そのため、着地動作の改善を目的 としたトレーニングは、膝関節スポーツ傷害予防の観点から重要である。そこで本研究の目的 は、片脚ドロップ着地(SDL)における着地方向の違いが身体重心位置、下肢関節および関節モ ーメントへ与える影響を検証することとした。そして、どの方向への着地動作が最も着地動作 改善に繋がるかを検討した。【方法】対象は健常成人女性12 名(身長158.2±5.8cm、体重56± 6.7kg、年齢21±1.8 歳)とし、学生アスリートは除外した。対象者は30cm の台から30cm 先の プラットフォームへ片脚でのドロップ着地課題を実験室にて行なった。着地方向は前方(FDL)、 外側方(LDL)、後方(BDL)、後外側方(BLDL)の4 方向とし、各方向3 回ずつSDL を行い、各身体 セグメントの三次元運動学的・動力学的データを3 次元動作解析システムおよび地面反力計を 用いて測定した。下肢関節モーメントは逆動力学的に算出し、全ての動力学的変数は身体質量 で正規化した。最大地面反力垂直成分(vGRF)発生時における膝関節屈曲および外反角度(+方向 はそれぞれ屈曲および外反)、身体重心位置の足関節中心に対する前後および内外側方向の距離 (COM 距離, +方向は足関節より前方および内側)、膝関節および股関節における矢状面の関節 モーメント(+方向はそれぞれ屈曲及び内反)、vGRF を分析項目とした。一元配置分散分析およ びBonferroni 法による多重比較検定により条件間の各分析項目の平均値の差を検証した。有意 水準は5%未満と設定した。【結果】BDL における前後方向のCOM 距離(13.6±0.5cm)はFDL(-5.4 ±0.6cm)より有意に前方に位置し(p<0.001)、LDL における左右方向のCOM 距離(8.6±0.5cm) はFDL(-0.2±0.3cm)より有意に内側へ位置した(p<0.001)。BDL の膝関節屈曲角度(32.5± 6.2°)はFDL(26.6±4.7°)より有意に増加した(p=0.001)。LDL の膝関節外反角度(-3.0± 4.9°)はFDL(-6.4±4.7°)と比較し有意に増加した(p<0.001)。FDL の膝関節伸展モーメント (0.5±0.1Nm/kg)はBDL(0.1±0.1 Nm/kg)より増加の傾向を示した(p=0.012)。股関節伸展モー メントは各着地方向(FDL:2.4±0.2 Nm/kg, LDL:3.0±0.2 Nm/kg, BDL:3.2±0.5 Nm/kg, BLDL:2.8±0.4 Nm/kg)において有意差を認めなかった(p=0.47)。【考察】本研究の結果は、後 方への着地トレーニングは、大きな膝屈曲かつ前重心で、過度な膝伸展モーメントを発揮しな い着地動作の習得に有効であることを示している。一方、側方への着地トレーニングは膝外反 角を増大させる傾向があるため、前方への着地に比べ膝外反を増大させないことに意識を向け て行う必要があると考えられる。

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