日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第10回日本トレーニング指導学会大会
会議情報

ポスター発表
高齢者における自重を用いた連続ホッピングは下肢筋力を鍛える運動として有効か
*中谷 敏昭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. P05-

詳細
抄録

【トレーニング現場へのアイデア】加齢にともなう下肢筋力の低下は、階段昇降や椅子や 床からの立ち上がりを次第に困難にさせる。そのため、自重を持ち上げる運動(例えば、 ホッピング)が下肢筋力を低下させないトレーニングとして十分に期待ができる。 【目的】本研究では、自重を用いた連続ホッピングが高齢者の下肢に及ぼす負荷と循環応 答への影響を検討する。 【方法】測定環境:自宅や限られたスペースで実施可能である。トレーニングはメトロノ ームを使ってリズミカルなテンポを加えた方が効果的である。測定参加者:地域に在住 し、膝関節や股関節に整形外科的あるいは循環器系疾患を有さない高齢男女20 名(年齢 66.5±4.3 歳、身長157.8±9.3 cm、体重57.2±9.3 kg、BMI 22.9±2.9 kg/m2)とした。 すべての参加者には研究参加への同意を得ている。測定手順及び分析方法:連続ホッピン グはメトロノームの音(1.5 Hz)に合せて、立位からその場での跳躍を活動筋が「かなり 効いてきた」と感じる回数まで行わせた。着地時の荷重負荷は、フォースプレートから床 反力信号をPowerLab を介してPC に取り込み分析した。測定項目は着地時荷重、滞空時 間、跳躍高とし、着地時の膝関節角度もビデオ画像から算出した。循環応答の測定は、安 静時および運動後の心拍数と血圧値であった。また、外側広筋と腓腹筋内側頭の筋硬度、 運動後の自覚的運動強度(Borg-RPE)も測定した。測定値はすべて平均値と標準偏差で示 し、安静時と運動後の測定値の比較は対応のあるt 検定を用いた。【結果】連続ホッピン グにより活動筋の疲労を強く感じた部位は大腿部が55%、下腿部が35%、呼吸循環器の 疲労を強く感じた者は10%と少なかった。ホッピング回数は71.8±24.0 回、着地時の荷 重負荷は体重比で2.3±0.5 倍、滞空時間から算出した跳躍高は3.1±1.2 cm、膝関節角度 は118.6±11.8 度であった。心拍数は安静時69.2±9.7 beats/min から運動後117.5± 17.1 beats/min、収縮期血圧は安静時134.8±19.0 mmHg から運動後179.0±29.5 mmHg、 拡張期血圧は安静時77.9±10.2 mmHg から運動後86.0±15.0 mmHg と有意に上昇したが、 外側広筋の筋硬度は安静時41.7±11.3 から運動後40.3±5.6、腓腹筋の筋硬度は38.9± 14.3 から運動後37.9±14.5 と変化がなかった。運動後の自覚的運動強度は14.3±1.6 で あった。カルボーネン法で求めた運動強度は58.5±18.9%であった。【考察】本研究の連 続ホッピングは、下肢への荷重負荷が階段昇降時の負荷に近く、無理のない運動であっ た。また、活動筋の疲労を指標とした運動の場合は大きな血圧上昇もなく、アメリカスポ ーツ医学会の運動指針で推奨される有酸素運動の強度の範囲内でもあった。以上のことか ら、活動筋の疲労を指標とした連続ホッピングは、高齢者の下肢や循環機能に過度な負荷 を与えることのない安全な運動であると言える。

著者関連情報
© 2021 日本トレーニング指導学会
前の記事 次の記事
feedback
Top