抄録
【トレーニング現場へのアイデア】ショートフットエクササイズ(SFE)の研究では、通
常4 週間から6 週間のトレーニング期間が設定されるが、動的姿勢制御の向上に関して
は、2 週間程度のトレーニング期間でその効果が見られるかもしれない。【目的】筆者らは
過去の研究において、4 週間のSFE は、健康な大学生の動的姿勢制御を向上させることを
明らかにした。しかしながら、筆者らの実践指導の経験上、その効果は2 週間程度で現れ
ると感じられた。従って、本研究ではPilot study として、2 週間のSFE が健康な大学生
の動的姿勢制御に及ぼす影響について検証することを目的とした。【方法】実験環境:ア
スレティックトレーニング実習室。実験参加者:健康な大学生男子(身長172.2±3.6cm、
体重65.9±3.5kg、年齢20.3±0.6 歳)3 名3 脚とした。実験手順及び分析方法:測定脚
は、ボールを蹴る時の軸脚とし、2 週間のSFE 前後に動的姿勢制御を測定した。SFE は、
足趾を屈曲することなく、遠位中足骨頭を踵に近づけるように、もしくは、足部内側縦ア
ーチを引き上げるようにして、足部内在筋を収縮させるエクササイズである。2 週間の
SFE は、3 回/週x2 週間(計6 回)のトレーニングセッションで構成され、トレーニング
期間のSEF の負荷は、事前に設定したプロトコールに従い漸進的に増加させた。動的姿勢
制御の測定は、Star Excursion Balance Test(SEBT)を用いた。測定脚はボールを蹴る
際の軸脚とした。SEBT では、測定脚立位姿勢にて反対脚のつま先を3 方向(前方、後内
側、後外側)にバランスを崩さずに最大リーチした距離を測定した。被験者は、SEBT の動
作に慣れるための練習セッションとして、前方、後内側、後外側での最大リーチを6 回ず
つ行った後、測定セッションとして各方向に最大リーチを3 回ずつ行った。測定セッショ
ンで得られた最大リーチ距離の平均値は、脚長で除すことで標準化し、その値をSEBT 値
とした。統計分析:独立変数は、SFE 前後(Pre、Post)、従属変数はSEBT 値(前方、後内
側、後外側)とした。統計処理として、各従属変数における効果量を算出した。なお、効
果量の判定基準はCohen のガイドラインに従い、0.80 以上をLarge、0.50 から0.79 を
Medium、0.20 から0.49 をSmall とした。【結果】Pre とPost の比較において、前方、後
内側、後外側の3 方向すべてにSEBT 値の向上がみられた。効果量は、前方でMedium、後
内側と後外側ではLarge を示した。(前方:Pre =0.75±0.02、Post =0.76±0.01、効果量
=-0.63、後内側:Pre =0.86±0.03、Post =0.89±0.02、効果量=-1.18、後外側:Pre
=0.80±0.02、Post =0.87±0.01、効果量=-4.43)【考察】Pilot study の結果、2 週間の
SFE は、健康な大学生の動的姿勢制御を向上させる可能性があることが示唆された。今後
は、本実験を実施しSFE の効果検証を進めたい。