日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第10回日本トレーニング指導学会大会
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ポスター発表
スクワット動作の時間変化がエネルギー代謝に与える影響について
*千木良 佑介
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p. P07-

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抄録

【トレーニング現場へのアイデア】 近年、筋力増強法としてスロートレーニング(slow resistance exercise:以下SRE)が注 目されている。SRE とは、低負荷をかけてゆっくりと挙上・下降動作を行うものである。 高負荷のレジスタンストレーニングと同様の筋量と筋力の増加が認められたとの報告もあ り、安全に筋肥大・筋力増強につながる効果的なトレーニングといわれている。 本研究の結果よりスクワット動作の時間が延長するごとにエネルギーの消費が上がり、 体感疲労も上昇することが分かった。運動負荷は強度、回数、持続時間の積で算出される ボリュームが重要であることが再確認できた。そのため、SRE を実施していく上では運動 強度が高すぎてしまっても対象者への負担になり、運動リスクを増加させる可能性がある ことを留意していく必要があると考える。 【目的】 スクワット動作における挙上・下降時間に着目し、時間変化による呼気ガス分析値およ び血中乳酸濃度を分析し、トレーニング特性を明らかにすることを目的とした。 【方法】 健常な男子大学生9 名(19.59(18-22)歳)を対象とした。スクワットはバーベルスク ワットとし、負荷は体重の40%の重量とした。1 回のスクワットを行う時間によって3 群 に分けて実施した。A 群は4 秒で行うスクワット(下降2 秒、挙上2 秒)、B 群は8 秒で行 うスクワット(下降に4 秒、挙上に4 秒)、C 群は10 秒で行うスクワット(下降に5 秒、 挙上に5 秒)とし、全群10rep 行った。1 被験者に対し各群1 回ずつ測定した。なお、各 群間には、3 日以上の間隔をあけた。血中乳酸濃度(Lac)、最高酸素摂取量(peak VO2)、 最高ガス交換比(peak R)、Borg Scale を計測、評価した。各群間の比較にはFriedman 検定後、Wilcoxon の符号付順位和検定にBonferroni の不等式修正を用いて多重比較を行っ た。統計処理にはIBM SPSS Statistics Version24 を使用した。 【結果】 Lac は全群において有意差は見られなかった。Peak VO2 はB 群とC 群に(P=0.004)、 Peak R はA 群とB 群に(P=0.016)、Borg Scale はA 群とC 群に(P=0.011)おいて有意 差がみられた。 【考察】 スクワット動作の時間が延長するごとにエネルギーの消費が上がり、体感疲労も上昇す ることが分かった。今回の研究では、各群とも、最大乳酸定常(MLSS;Maximal Lactate Steady State)と呼ばれる血中乳酸濃度が一定レベルを維持し続けられる運動強度(血中乳 酸濃度が3~4mmol/L 程度)であり、安全に運動を行えるレベルであった。

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