抄録
【トレーニング現場へのアイデア】本研究において、幼児の敏捷性や跳能力は体格との関係性
が認められなかった。そのため、幼児期における敏捷性や跳能力は、動作の習得や運動スキル
が関与していると考えられる。幼児期において、遊びを通して多様な動きを経験させることが
重要である。そのため、日常の遊びの中に人や物などに対して反応する動きや単発的もしくは
連続の跳動作を継続的に取り入れていくことが、幼児の総合的な運動能力向上のためには必要
であると考えられる。
【目的】幼児期において、運動能力は身長の増大などの発育や様々な運動経験の有無が影響を
与えていると考えられている。そこで本研究は、幼児期における体格と走跳の運動能力との関
係性を明らかにすることを目的とした。
【方法】測定環境:S大学体育館にて測定を実施した。測定参加者:運動教室などの習い事に参
加しておらず定期的な運動習慣のない4~5歳児41名(身長108.3±5.6㎝、体重19.0±3.2kg、
年齢4.4±0.5歳)を対象とした。測定手順:測定項目は、身長、体重、10m走、プロアジリティ
2.5m法、4センサーアジリティ、垂直跳び、両脚リバウンドジャンプとした。10m走およびプ
ロアジリティ2.5m法はWitty光電管、4センサーアジリティはWitty SEM、垂直跳びおよび両脚
リバウンドジャンプはPush 2.0を用いた。10m走はスタートからゴールまでの10m間全力疾走を
行わせた。プロアジリティ2.5m法は、現法の5m間隔を幼児用に2.5m間隔に変更して実施した。
4センサーアジリティは、Witty SEMを対角線4mの四角形の頂点 に4か所設置し、ランダムに光
るセンサーを12回タッチする時間を計測した。垂直跳びは、反動を付けて最大努力で跳躍させ
た際の跳躍高を計測した。両脚リバウンドジャンプは、両脚で連続10回ジャンプ を行わせ接
地時間と滞空時間から算出されたRSIを計測した。全ての運動能力測定において、測定者が見
本を見せながら説明し数回練習させた後、本試技を2回行わせて良い方の記録を採用した。統
計分析:各運動能力測定項目を従属変数として、身長および体重を独立変数としたステップワ
イズ法による重回帰分析を行った。なお、統計的有意水準は全て5%未満とした。
【結果】重回帰分析の結果、10m走およびプロアジリティ2.5m法を従属変数とした場合のみ身長
が回帰式に投入された。10m走を従属変数とした場合、身長が16.5%の分散(p<0.05) を説明
し、プロアジリティ2.5m法を従属変数とした場合、身長が23.3%の分散(p<0.05)を説明す
る結果となった。
【考察】本研究において、ストライド幅が関係すると考えられる項目において身長との関係性
が認められたが、反応を伴う敏捷性や跳動作を含んだ項目と体格との関係性は認められなかっ
た。敏捷性や跳能力においては、発育ではなく運動経験や運動スキルが関与している可能性が
示唆された。