抄録
【現場へのアイデア】速度基準を用いたスクワットジャンプトレーニング(VBT)では、トレー
ニング量に関わらず、最大筋力や筋機能特性の向上が確認された。これは、軽重量かつ少ない
トレーニング量でも効果が促進されることを意味する。したがって、本研究で実施したスクワ
ットジャンプは、ピリオダイゼーションの観点からも合理的かつ効率よく、パフォーマンス向
上に寄与することが期待される。
【目的】本研究は、速度基準を用いたスクワットジャンプトレーニングが最大筋力、スプリン
トタイムおよびジャンプパフォーマンスに及ぼす影響について明らかにすることを目的とし
た。
【方法】実験環境:研究機関のトレーニング室(2024年9~12月)。実験参加者:健常な男子大
学生24名[年齢:20.1±1.1歳、身長:171.7±6.3cm、体重:66.0±7.8kg、スクワット(SQ)
1RM:90.4±15.4kg、SQ1RM体重比:1.38±0.21]実験手順及び分析方法:トレーニング介入前
後に身体組成、SQ1RM、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)、ロードジャンプ(Load-J)お
よび20mスプリント(0-20m、0-10m、10-20m)を測定した。2グループに分け、速度低下率を5%
(VLC5%)と15%(VLC15%)と設定した。トレーニングはスクワットジャンプとし、挙上速度を
基準に重量を設定した。セッション(S)1~2は、1.4~1.5m/sの速度に対応した重量で5rep×
3セット、S3~S6は1.3~1.4m/sの速度に対応した重量でVLC(5% or 15%)-rep×3セット、S7
~S10は同条件で4セット、S11~S16は同条件で5セット実施した。トレーニング中はリニアポ
ジショントランスデューサーでパラメータを記録し、各セット後に主観的疲労度(RPE)を聴取
した。統計分析:グループ間、トレーニング介入前後のパラメータおよびミクロサイクルのト
レーニングデータの差の検定には、2要因分散分析混合モデルを使用した。
【結果】対象者のトレーニング前後の数値(VLC5%、VLC15%)は以下の通り。なお,本研究は、
第12回日本トレーニング指導学会にて報告(対象者2名)した内容にすべてのデータを加え分
析したものである。SQ1RM(+18.1%、+16.1%)、CMJの跳躍高(+4.6%、+12.1%)、Load-Jの
ピークパワー(+31.3%、+33.6%)、20mスプリントタイム(-1.3%、-1.7%)およびその前半
区間(-1.5%、-2.5%)。いずれも、トレーニング後に統計的に有意なパフォーマンス向上が
認められ、グループ間に差は認められなかった。
【考察】本研究は、速度基準を用いたスクワットジャンプトレーニングが下肢の最大筋力およ
び爆発的な力発揮能力の向上に寄与することを示した。軽負荷のスクワットジャンプは下肢三
関節伸展筋の爆発的筋活動を促進し、VBTを活用することでトレーニング量に関わらず少ない
トレーニング量でも十分な効果を獲得し、疲労の蓄積も抑制できると考えられる。