抄録
【現場へのアイデア】幼児期においてサッカーを実施することで疾走能力と方向転換能力が向
上する可能性が示唆された。また、平日および休日の外遊び時間が運動能力に影響しているこ
とから、幼児の運動能力を向上させるためには、保護者に対する外遊びの重要性を伝え外遊び
時間の増加や、サッカーに含まれる様々な運動(走る、止まる、反応するなど)を含めた遊びを
日常的に取り入れる必要がある。さらに、敏捷性を高めるためには日常の遊びだけでなく人や
物に対して反応をする遊びを実施する必要が考えられる。
【目的】幼児期は様々な運動を経験することにより運動能力が向上することが報告されている。
本研究は、習い事や平日および休日における家庭での外遊び時間が運動能力にどのような影響
を及ぼしているのかを検証することを目的とした。
【方法】測定環境:S幼稚園プレイルーム(室内) 測定参加者:年中クラスに所属する4歳児23名
(身長107.8±4.3㎝、体重18.0±2.8㎏)測定方法:疾走能力として10m走(Witty光電管)、方
向転換能力としてプロアジリティ2.5m法(Witty光電管)、敏捷性として4センサーアジリティ
(REAXION)の測定を行った。幼児が実施している習い事および家庭での外遊び時間(平日、休
日)にいて、保護者を対象としたアンケートを実施した。
統計解析:運動系習い事(サッカー群5名、体育教室群6名および非運動群7名)、平日および休
日の外遊び時間(平日:40分以上群8名および40分未満群15名、休日:61分以上群11名および
60分以下群12名)で群分けを行った。運動系の習い事は一元配置分散分析、外遊び時間は対応
の無いt検定を用いて運動能力の比較を行った。統計的有意水準は全て5%未満とした。
【結果】習い事においてサッカー群は他の群よりも10m走が有意に速かった (p<0.05)。ま
た、プロアジリティ2.5m法においてサッカー群は非運動群よりも有意に速い傾向が認められた
(p=0.069)。平日の外遊び時間において40分以上群は40分未満群に比べて10m走およびプロアジ
リティ2.5m法が有意に速かった (p<0.05)。休日の外遊び時間において、61分以上群は60分以
下群に比べて10m走が有意に速かった(p<0.05)。4センサーアジリティにおいてはいずれも有
意な差は認められなかった。
【考察】幼稚園での遊び以外で習い事や一定時間以上の外遊びを実施することで幼児期の疾走
能力および方向転換能力が向上する可能性が示唆された。敏捷性を向上させるためには、方向
転換能力だけでなく認知知覚要因が含まれるため、これらを含めた運動遊びの環境設定や種類
の選択が必要になると考えられる。本研究において、年中クラスに限定しており、外遊びの種
目や運動環境について調査していないため、更なる検討が必要である。