千葉県立保健医療大学紀要
Online ISSN : 2433-5533
Print ISSN : 1884-9326
第9回共同研究発表会(2018.8.28)
千葉県立保健医療大学地域貢献についての研究
─ 千葉市内地区別比較からみえるもの ─
島田 美恵子岡村 太郎松尾 真輔雄賀 多聡竹内 弥彦岡田 亜紀子雨宮 有子麻賀 多美代大川 由一中島 一郎
著者情報
研究報告書・技術報告書 フリー

2019 年 10 巻 1 号 p. 1_116

詳細
抄録

(緒言)

 急速な高齢社会を迎えているわが国において,「可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける」地域包括ケアシステムの構築および自助・互助の住民参画活動が提唱されている.

 社会貢献は,研究・教育とともに,大学に求められる使命の一つである.本研究は,千葉市保健福祉局が養成した「シニアリーダー(介護予防運動推進ボランティア)」を対象とし,地域のニーズおよび本学の地域に対する支援の在り方を検討することを目的とした.

(研究方法)

 平成29年12月現在,シニアリーダー登録者は503名である.シニアリーダーが主体となり運営する自主活動は市内133箇所,参加延べ人数は68,000名以上である.本研究はシニアリーダー503名に,村山ら1)の先行研究をもとに作成した自記式質問紙を郵送し,無記名での回収とした.調査実施期間は平成29年12月29日から平成30年1月20日とした.主な調査内容はシニアリーダーの性別,年齢,受講時期,居住地域等の基本属性に加え,現在参加しているシニアリーダーの活動状況,リーダー活動で感じていること,サポート環境,本学への要望などである.分析方法は,単純集計及びクロス集計で,居住地域と性別及び年齢,受講時期,シニアリーダーの活動状況などの関連については,カイ二乗検定を用いた.

(結果)

 男性128名(平均年齢73.4 標準偏差4.8歳),女性190名(70.9±4.4歳),計318名の回答を得た(回収率63.2%).受講後活動に参加したことがないものは52名(16.7%)であり,回答者の活動状況は地区による差がみられた(P=0.016).回答者の78%が「活動にやりがいがある」「活動に楽しいと感じる」と答え,受講時期が早いものほど「やりがい」「楽しさ」を感じている者が多かった(P<0.05).「住民同士のつながりは強い」「地域の活動に参加している住民が多い」に「あまりそう思わない」「思わない」と答えたものに地区別の差はみられず,それぞれ49%,62%であった.「シニアリーダー活動が地域住民に知られていない・あまり知られていない」と答えたものは全体の70%であった.活動に対する自由記述,活動しない理由の自由記述においてのべ133件の回答があり,リーダーが指導する住民への対応やリーダー同志の関係の難しさ,地域施設のサポートを要望すると記載した内容が45件あり,自治会やあんしんケアセンターとの関わりを求めていた.フォローアップ講座開講への要望は設問・自由記述ともに高かった.

(考察)

 本学の支援として「関係性を調整する役割」が推測された.ひとつは,先行研究と同様に本研究においても明らかになった,経験年数別にリーダーの活動意識に違いがあることへの考慮である1).リーダー養成講座のカリキュラム作成時に工夫が必要であることが示唆された.また,本学による出前講座などのサポートは,指導内容の確認や新たな知見の授受により,リーダーの役割意識を強化できる可能性がある2).地域施設とともに,リーダーの活躍の場を確保しフォローできる体制づくりの構築が望まれた

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の 承認(申請番号2017-036)を得て実施された.

著者関連情報
© 2019 千葉県立保健医療大学
前の記事 次の記事
feedback
Top