2019 年 10 巻 1 号 p. 1_123
(緒言)
近年、理学療法士(以下PT)・作業療法士(以下OT)の教育現場において、セラピストとしての将来像が明確でない学生が多いように感じ、学内では問題とならない学生が臨床実習を契機に顕在化し、セラピストになるための障害要素となることが見受けられる.今回、平成26年度入学時に意識調査を実施した4年制養成校のPT学生とOT学生を対象とし、卒後の進路と専門職になるために必要な行動目標についてどのように考えているかを明らかにするため、学生への進路希望調査と行動目標に対する意識調査を卒業年次となる平成29年度に実施した.
(研究方法)
平成29年度におけるPT・OT4年制養成校の臨床実習をすべて終了した卒業年次生を対象とした.協力養成校と対象学生の概略としては、大学3校、専門学校4校計7校321名(大学生209名・専門学校生112名)であった.尚、研究を遂行するに先立って、本学倫理委員会の承認を受け、事前に各養成校教員および対象学生の同意を得た.対象学生へのアンケート調査を行った(無記名自記式質問紙票を使用).調査内容としては、現在希望している卒後の進路に加え、卒後の就職PTまたはOTになるために必要と考えることを優先順位が高い順に自由記載で回答させた.優先順位が最も高い行動目標について、Benjamin Samuel Bloomによる教育目標の分類に従い、認知的目標(知識と思考)・情意的目標(感情と態度)・精神運動的目標(物理的動作)に分類し、百分率にて算出した.
(結果)
回答があったPT・OT4年制養成校の321名中、有効回答数315名であった.進路希望の回答結果では、就職希望310名、進学5名であり、就職希望者全体で病院が88.6%となり、医療機関への就職希望者が多かった.必要とされる行動目標の回答結果では、大学、専門学校全体の回答では、認知的目標49.0%、情意的目標24.6%、精神運動的目標26.4%となった.また大学と専門学校別の結果として、大学生の回答では認知的目標51.2%、情意的目標23.2%、精神運動的目標25.6%であり、専門学校生の回答では、認知的目標45.1%、情意的目標27.0%、精神運動的目標27.9%という結果であった.
(考察)
大学生には進路希望者がいたが、専門学校生では回答者全員が就職希望者であった.これは大学生の方が学生生活において大学院進学などの情報を得やすい環境であり、選択肢の一つとして考えやすいことが推測された.必要な行動目標の回答結果からは、大学生、専門学校生ともに重要視する行動目標としては、「医学知識」を中心とした認知的目標となり、大学生では、半数を超える回答結果であった.さらに大学生と専門学校生の行動目標の比較では、認知的目標で大学生の方が高い結果となり、情意的目標と精神運動的目標は専門学校生が高い結果となった.しかしながら全体の回答結果において大学、専門学校とも学生が必要と考える各行動目標においては大きな差がなく、情意目標に対する意識が低い傾向にあることが分かった.今回のアンケート調査は卒業年次の学生であり、臨床実習を含めた全てのカリキュラムにおいて、おおよそ単位取得されている学生が対象となった.このため学生自身が課題をクリアしてきたことが想像されたが、今後の調査では、各課題において壁を乗り越えにくい学生の特徴を知ることも大切となることが考えられる.
卒業年次生は翌年度から臨床現場に赴き、対象者に医療従事者として関わっていくこととなり、各領域の臨床場面において各行動目標が状況に応じて求められる.本校でもこれまで実施してきた調査も踏まえ、今後は学生が問題となる要素に焦点を当て、適切な学生指導につなげていくことが専門職教育として重要であると考えた.
(倫理規定)
本研究は,千葉県立保健医療大学倫理審査委員会の 承認(申請番号No2014-001)を得て実施した.