千葉県立保健医療大学紀要
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第9回共同研究発表会(2018.8.28)
高齢者のノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生の予防
:通所・入所・訪問サービス提供者の認識と行動の実態調査
杉本 知子成玉 恵佐伯 恭子上野 佳代鳥田 美紀代高栁 千賀子
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2019 年 10 巻 1 号 p. 1_122

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抄録

(緒言)

 ノロウイルスの感染様式は多彩で,経口感染,接触感染,飛沫感染によりウイルスが伝播する.また,ノロウイルスは感染力が極めて強く,しばしば集団感染を引き起こす.近年では,訪問看護師が訪問先で感染したと考えられる事例1)などが報告されている.矢野ら2)は,在宅療養生活を営む要介護高齢者等のノロウイルス感染の大半は,糞便や吐物の処理が不適切であったためにヒトからヒトへとウイルスが伝播したことが原因であろうと推測している.このことを踏まえると,療養者の居宅に赴きサービスを提供する訪問看護師には,ノロウイルス感染の媒介者となるリスクが常に付随していると言える.加えて,療養者の居宅という環境下で感染予防に取り組まなければならない特殊性もあることから,訪問看護師には感染予防に関する高度なスキルの獲得が求められていると考えられる.しかし,訪問看護師を対象としたノロウイルス感染の予防に関する調査自体がほとんど行われておらず,知見の蓄積は不十分な状況にある.そのため,まずは訪問看護師がノロウイルス感染の予防のために実践しているケアの現状を明らかにすることを目的とした実態調査に着手することにした.

(研究方法)

関東地方に所在する訪問看護ステーションに勤務中の訪問看護師4名を対象とし,2017年3~6月に半構成的面接調査を実施した.調査では,「在宅療養を営む高齢者のノロウイルス感染の予防のために実践しているケアの現状」を尋ねた.面接内容は調査対象者の許可を得て録音し,その内容の全てを逐語記録にした.その上で,訪問看護師が実践しているケアの内容や,実践しているケアに対する見解を述べた部分を抽出し,それぞれについて帰納的に分類をしてカテゴリーを生成した.

(結果と考察)

1.調査対象者の概要:

 対象者は全員女性であり,年齢は50歳代が3名,30歳代が1名であった.職位は管理職が3名,スタッフが1名であり,訪問看護師としての経験年数は15年以上が2名,5年以上10年未満が1名,1年以上3年未満が1名であった.

2.感染予防のために実践しているケア:

 面接データを分析した結果は,以下のとおりである.なお,抽出されたカテゴリーは【 】で記した.

 訪問看護師は,サービスの提供に際し,【効果的なタイミングで手を洗う】ことを徹底して行っていた.また,【汚物に触れることを想定し必要物品を持ち歩(く)】いたり,【流水による手洗いができなくても手指の衛生を保つ】ように努めていた.そして,【療養者と家族が遂行可能な感染予防のための行動レベルを見極め(る)】ながら【住まいや暮らしの状況にあわせた感染予防方法を提案(する)】したり,【調理や汚物処理の方法を具体的に説明(する)】していた.

3.実践しているケアに対する見解:

 訪問看護師は,【共用する物品や自分自身が感染の原因になる】ことを実感すると共に,【経験不足であっても単独で訪問している現状に不安を感じ(る)】ていた.さらに,【感染予防をすすめる時にもコスト面を意識せざるを得ない】状況にも直面していた.これらは,滞在時間や訪問回数に制限ある中で単独で療養者の居宅に赴き,各療養者宅の環境や事情に合わせて看護サービスを提供する訪問看護師に特徴的な点であると考えられた.

(倫理規定)

 本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した.

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