千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
中小規模医療施設における看護研究指導者の充実に向けた研修プログラムの開発
─ 骨子の立案と研修の実施 ─
浅井 美千代杉本 知子西野 郁子佐藤 紀子河部 房子片平 伸子北川 良子
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_70

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抄録

(緒言)

 看護研究は,看護実践の根拠を明らかにし,実践の質を向上させる上で重要である.しかし,臨床現場で看護実践に従事している看護職者が,看護研究活動を行うには多くの困難があるといわれている.今回,看護研究に対する教育的支援を得ることが困難と推測される中小規模医療施設に勤務し研究指導を担う立場にある看護職者を対象に,研究指導充実のための研修プログラムの開発を目的として本研究を実施した.

(研究方法)

1.対象:中小規模医療施設において研究指導を担う立場にある中堅看護師や看護管理職者19名

2.期間:平成30年6月~平成31年3月

3.方法

1)研修プログラムの考案

  研修内容について先行研究等を基に検討し,「テーマ設定」「研究計画立案」「研究倫理」「論文作成・発表方法」を講義した後,グループ討議により研究指導に関する困難さの共有を図るプログラムとした.

2)研修プログラム評価のための調査票作成

  調査内容は,①基本属性,臨床経験,看護研究に関する経験や施設内環境,②本研修で学びたいこと,③研究や研究指導への意欲,④研修プログラムへの満足度及び意見とし,研修の直前に①②③,直後に③④を調査することとした.

3)研修プログラム及び調査の実施

  県内の300床未満の病院85施設に研究依頼書を送付して研修(研究)参加者を募集し,本学において研修プログラム及び研修前後の調査を実施した.

4)データ分析

  調査内容の③については点数化して研修前後の変化を比較検討した.

(結果)

1.対象の概要

 対象者は全員女性で,臨床経験年数は平均21.5±5.6年であった.教育背景は看護学校卒が13名で,学生時の研究についての学習経験者は9名であった.

2.本研修で学びたいこと

 研修で学びたいこととして,【研究実践力の向上】【研究指導力の向上】の2つが挙げられた.

3.グループワークの討論内容

 臨床で看護研究をする上での悩みとして,【研究のモチベーションを維持することが難しい】【研究がうまく進むように支援することが難しい】,研修参加動機として【指導のコツを知り,聞かれたことにうまくアドバイスしたい】【倫理的配慮について理解したい】などが語られた.

4.研究や研究指導への意欲

 研究や研究指導に取り組みたいと思う程度について,「全く思わない」を1点,「とてもそう思う」を10点として得点化し,その平均を研修前後で比較した.その結果,研修前に比べ,研修後における平均点の上昇が共に認められた.

5.研修への満足度

 「この研修に参加してよかったと思う」という設問に19名全員が「とてもそう思う」と答えた.しかし,「研修時間(長さ)の適切さ」では3名が「そう思わない」と答え,自由記述欄に「倫理についてゆっくり聞きたかった」との記述がみられた.

(考察)

 今回の研修は,研究の基礎的知識の提供に焦点をあて構成した.本研究の対象者の7割が看護専門学校卒者で研究について学習経験がなかったという教育背景が関係し,本研修への高い満足度が得られたと推測する.研修時間の適切さでは,研究倫理についての内容の充実を図ることで満足度が高まると考えられた.また,臨床で研究を進める上での問題を解決する糸口を見出せるよう,【研究指導力の向上】に関する研修内容を検討する必要性が示唆された.

(倫理規定)

 本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認(申請番号2018-32)を得て実施した.

(利益相反)

 本研究における利益相反はない.

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