千葉県立保健医療大学紀要
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第10回共同研究発表会(2019.8.28)
千葉県の栄養教諭・学校栄養職員の現状および学校内での協力体制に関する調査
岡田 亜紀子渡邊 智子越川 求海老原 泰代
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_78

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抄録

(緒言)

 平成29年度から「つながる食育推進事業」が展開され1),栄養教諭が中心となって子どもたちを取り巻く食環境の整備にあたれるよう,校内外を問わない食育の実践モデルを構築し,それに取り組むことが求められ,期待されている.

 平成29年度には6,092名の栄養教諭が全国に配置され2),千葉県内の栄養教諭は262名2),全国6位の配置数である一方で,平成28年度に渡邊らがおこなった調査「千葉県の栄養教諭・学校栄養職員の職務および食育の現状と課題」では,栄養教諭等と他の教員との食育についての連携が取りづらいこと,日々忙しく,食育の時間が十分確保できないなどの現状がわかった.

 本研究ではそれら背景要因の詳細の解明および食育に関係する教諭職である養護教諭,給食主任の職務の現状と栄養教諭・学校栄養職員の現状を比較し,千葉県における栄養教諭・学校栄養職員の職務状況や配置数,他教諭との協力体制に関する状況を明らかにすることを目的とする.

(研究方法)

 千葉県内公立学校101校に勤務する栄養教諭・学校栄養職員,養護教諭,給食主任を対象にした無記名式質問紙調査を郵送にておこなった.職種で異なる設問を含む調査票を用い,所属先の属性,回答者の属性,食育あるいは保健指導に関することの3つの内容で質問票を構成した.

 対象校は,千葉県教育委員会「教育便覧」記載の公立小学校,中学校,義務教育学校,高等学校(定時制),特別支援学校それぞれにおける千葉県「二次保健医療圏」毎の学校数を元に割合を算出し,その割合に基づき合計数が101校になるようExcelソフトデータ分析ツールを用いて無作為抽出した.

 結果は,Excelソフトによる単純集計を実施した.

(結果)

 各職種からの調査票回収状況は,栄養教諭・学校栄養職員は28%,養護教諭は17%,給食主任は27%であった.

 栄養教諭・学校栄養職員は,管理栄養士46%,栄養士54%であり,栄養教諭免許の種別内訳は,Ⅰ種57%,Ⅱ種21%,なし21%であった.雇用形態は,栄養教諭(常勤)54%,学校栄養職員(常勤)36%,学校栄養職員(非常勤)11%であった.

 栄養教諭・学校栄養職員対象の調査票では,所属する学校で食育に関する授業(以下,食育授業)を実施している時間数は,年間で15.9±13.3(以下,Mean±SD)時間であった.

 養護教諭対象の調査票では,所属する学校で保健指導に関する授業(以下,保健指導)を実施している時間数は4.3±3.2時間であった.

(考察)

 本調査の回答は,小学校が最も多かった.

 栄養教諭・学校栄養職員の回答において,1学年あたり6.3±6.5時間の食育授業が必要であると感じており,現在実施している食育授業の年間時間数に到達していない.その理由として,「給食・食育に関する業務量が多い」,「児童・生徒と関わる時間が少ない」,「食育を指導する自信・スキルがない」,「他の教職員の食育への理解不足」と回答した者が多かった.

 養護教諭の回答において,1学年あたり2.8±1.3時間の保健指導時間が必要であると感じており,現在実施している保健指導の年間時間数に到達していない.その理由として,「保健指導以外の業務量が多い」,「児童・生徒と関わる時間が少ない」,「食育を指導する自信・スキルがない」と回答した者が多かった.協力体制を含め,今後,さらなる解析を進める.

(倫理規定)

 本研究は,平成30年度千葉県立保健医療大学研究等倫理審査委員会(承認番号:2018-34)に承認を得て,実施した.

(利益相反)

 本論文発表内容に関連して申告すべきCOI状態はない.

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