千葉県立保健医療大学紀要
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第11回共同研究発表会(2020.9.7~9.11)
A県内における一般病院に勤務する看護師長のセカンドキャリアに関する意識調査
西村 宣子富樫 恵美子
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2021 年 12 巻 1 号 p. 1_104

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抄録

(緒言)

 超少子高齢化社会に突入し,国民の健康を守る担い手である医療・福祉分野は,深刻な人手不足を迎えている.日本看護協会では,定年退職後の看護師を「プラチナナース」と称し,看護師のセカンドキャリアとして働き続けることを推奨している.厚生労働省においても,人材確保対策として「看護師のセカンドキャリアにおける活躍を図るための職場環境整備」1)が施策されている.先行研究において,看護管理経験のある者にセカンドキャリア希望が多かった(石井ら,2018)と報告があるが,看護管理者がセカンドキャリアにおいてどのように仕事を継続するのかは明らかにされていない.看護師長のセカンドキャリアに関する意識を明らかにすることは,プラチナナース活用に貢献できるものと考え,A県内の一般病院に勤務する看護師長のセカンドキャリアに関する意識を明らかにすることを目的とした.

(研究方法)

 A県内の一般病院209施設のうち協力の得られた67施設の40歳以上の看護師長440名に自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,対象者の属性,勤務継続希望の有無,セカンドキャリアに対する意識(考えた時期・働く場所・希望の職位・雇用形態),活かせる看護管理能力,準備状況等である.分析方法は,質問紙調査の選択項目は,基本統計量を算出し,自由記述欄の「働き続けたい」理由についてはテキストマイニングで分析を行った.

(結果)

1.回収数:255名(回収率57.4%).

2.対象者の属性:年齢40~44才31名(12%),45~69才69名(27%),50~54才71名(28%),55~50歳64名(25%),60~64名20名(8%).師長経験年数は,3年目以内54名(21%),3~5年未満46名(18%),5~7年42名(17%),7年目以上113名(44%).

3.セカンドキャリアに対する意識:「働き続けたい」110名(43%),「考え中」102名(40%),「働きたくない」40名(16%)であった.働く場所の希望は,「現在の職場」が56名(21.9%),「老人介護保健施設」35名(13.7%),「診療所」30名(11.8%)であった.希望の職位は,「スタッフ」107名(42%),「考えていない」103名(41%),「管理職」34名(13%)であった.セカンドキャリアで活かせる看護管理能力は,「質管理能力」・「人材育成能力」・「危機管理能力」の回答で占めた.セカンドキャリアを「考え始めた時期」については,「無回答」48%,「準備していない」215名(84%)であった.

4.「働き続けたい」理由のテキストマイニングによるワードの出現頻度では,「働く」・「仕事」・「経済的」が高かった.

(考察)

 看護師長のセカンドキャリアに対する意識は,「スタッフ」として「働き続ける」ことを希望する人が多かった.また,働き続ける理由のテキストマイニングから「仕事」,「働く」のワードが多かったことから,看護管理者として培われた経験や能力を活かして働くことより,「看護専門職として仕事を継続する」ことに価値をおいていることが示唆された.セカンドキャリアにおいて「現在の職場」で「非正規雇用」として働く希望が多いことに対しては,職場に対する帰属意識と共に,老化を自覚し,体力や認知力の低下から,職場適応に対する不安,責任や時間の拘束による負担からの解放を望んでいることが推察された.また,調査対象者の4割が定年まで10年以上あり,「仕事を継続する」意識は高いが,現場の業務に追われ,セカンドキャリアについて考える時間や,セカンドキャリアに関する情報を得る機会が少ないことが推察でき,雇用者や職能団体などの積極的な情報発信が必要であることが示唆された.

(倫理規定)

 本研究は,千葉県保健医療大学研究等倫理審査委員会の承認を得て実施した(2019-08).

(利益相反)

 本研究における開示すべき利益相反はない.

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