千葉県立保健医療大学紀要
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第11回共同研究発表会(2020.9.7~9.11)
小児病棟に配属異動となった看護師が経験する困難と教育ニーズの実態
石川 紀子前田 留美堂前 有香斎藤 千晶
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2021 年 12 巻 1 号 p. 1_105

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抄録

(緒言)

 成人系の病棟で勤務し小児が入院する病棟に配属異動となった看護師は,部署異動前の経験が通用しないことや小児看護においては新人と一緒の扱いを受けるということに困難を感じることが報告されている1)が,具体的な内容は明らかにされていない.

 本研究では,小児が入院する病棟に配属異動となった看護師に対して実施されている教育・研修内容や,看護師が経験した困難・教育ニーズを明らかにすることを目的とした.

(研究方法)

 対象は,A県内で小児が入院する病棟を有する施設の①小児が入院する病棟の師長,②成人系病棟から小児が入院する病棟に配属異動となった看護師,とした.

 調査方法は,無記名自記式の質問紙法で,2019年11月~12月に調査を行った.データ収集は,研究趣旨を記載した文書と質問紙を施設の看護管理者を通じて各対象者に配布し,郵送で回収した.質問紙の記入とポストへの投函をもって研究参加への同意とした.

 調査内容は,小児が入院する病棟の師長に対しては,病棟の概要,部署で行っている配属異動者への教育・研修内容,実施している支援体制について,配属異動となった看護師に対しては,看護職としての経験年数等の背景,配属異動となったことや成人とは異なる小児を対象として看護実践をするうえで経験した困難の内容,小児を対象とした看護実践に必要な知識や技術を養うための教育・研修の内容についてである.

 返送された質問紙の内容について,病棟および個人背景については単純集計による分析,配属異動者への教育の現状や看護師が経験する困難に感じていることについては,質的機能的分析を行った.また,共同研究者間で協議を重ね,分析の妥当性の確保に努めた.

(結果)

 49施設に質問紙を配布し,14名の病棟師長,25名の看護師から回答を得た.師長の回答より,小児科と他科の混合病棟が6施設,成人系の病棟内に小児の患者が入院している病棟が5施設,その他小児病棟と小児科病棟が1施設ずつからの回答であった.回答した看護師は,看護職としての経験年数は6~10年目が9名で,小児科と他科の混合病棟の所属が17名であった.また小児の医療や看護に携わった経験は異動後が初めてである看護師が14名であった.

 小児が入院する病棟における配属異動者への教育の現状として,異動者を対象とした研修が行われているのは5施設のみで,入院する小児の疾患や治療に関する研修が行われていた.残り9施設では,小児の入院患者数が少ないこと等の理由から研修が実施されていない現状にあった.

 配属異動に伴い看護師が困難を感じることとして,成人とは異なる点滴管理や急変時の対応といった小児特有の看護技術があげられた.また,子ども自身が病気を理解できない年齢層であることに関連し,発達段階に合わせた説明やコミュニケーション,啼泣が続く場合の乳幼児への対応方法についても難しさを感じていた.また回答者が勤務する9割の病棟で家族の付き添いが原則となっていたことから,親の不安やストレスへの対応についても難しさを感じていた.また小児への看護は未経験であっても経験者として見られるため日々の実践の中で不安を感じていること,子どもや家族との関わり方について学べる場が不足していることもあげられた.

(考察)

 配属異動となった看護師は,各部署に入院してくる子どもの疾患や治療については,施設内の研修や書籍等の活用を通して学ぶ機会は得られていた.一方で,成人とは異なる対象のアセスメント視点や,子どもや家族への対応について相談できる機会や学ぶ場がなく,学習ニーズがあると推察された.

(倫理規定)

 本研究は本学研究等倫理委員会の承認を受けて実施した(申請番号2019-23).

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