2021 年 12 巻 1 号 p. 1_116
(緒言)
2012年柏市をフィールドとしたコホート研究(柏スタディ)の結果から,口腔の機能の低下により介護リスクが高まることが示された.この調査によりオーラルフレイルが提唱され,健やかで自立した暮らしを保つには,早期の段階で口腔機能の回復と維持に努める必要性が示された.そして,2018年4月には口腔機能低下症が疾患として認められ,歯科診療所等に就業する歯科衛生士は,口腔機能の検査ととともに口腔機能低下症と診断された患者に対し,適切な口腔機能管理を行い,口腔機能低下の重症化予防,口腔機能の回復を適切に実施することが求められることになった.
そこで,就業中の歯科衛生士を対象に,口腔機能に関する知識と評価方法を教授し,口腔機能の回復・維持・向上のための機能訓練方法を考え,臨床の場で口腔機能管理を実践できる人材を育成し,オーラルフレイル予防として,地域在住高齢者に対し介護予防を実践できる人材を育成することである.
(研究方法)
受講生は千葉県立保健医療大学のホームページに掲載し募集した.
人材育成プログラムの内容は口腔機能低下症と高齢者の保健事業と介護予防についての講義,そして,口腔機能の検査方法と測定実習,およびオーラルフレイル予防に関するプログラムの作成であった.また,地域在住の高齢者に対するオーラルフレイル予防プログラムを実践する場も設けた.プログラムは全4日間とし,最終日にはプログラムの評価と就業歯科衛生士が求める育成プログラムの内容に関する調査を実施することとした.
(結果および考察)
受講生は14名であり,経験年数は卒後1年から35年と幅がひろく,勤務先は歯科医院,病院,保健センター,歯科衛生士養成校などさまざまであった.
口腔機能低下症に対し,歯科衛生士は口腔機能検査や機能管理,重症化予防,機能回復の実施が求められる.しかし,受講生の業務の現状は,口腔機能に関する業務に従事する機会は少ないことが伺えた.口腔機能測定機器の取り扱いや相互の測定実施は,受講生には意義のある研修になったと考える.今後は診療所等に勤務する歯科衛生士も介護予防に目を向け,高齢者の通いの場へ積極的に参加していくことが必要である.そのため,地域に赴き口腔機能の測定,口腔機能向上のためのプログラムを実践する予定であったが,新型コロナウィルス感染症拡大に伴い,延期の状態である.
(倫理的配慮)
本研究は,本学倫理審査委員会の承認(申請番号2019-22)を得て実施した.
(利益相反)
発表に関して申告すべきCOIはない.