観察による歩行分析の能力向上を目的とした演習を考案し,その教育効果と改善点を検討した.対象は理学療法学生26名であった.演習内容は,健常者の下肢単関節をテーピングで擬似的可動域制限の状態とし,それによる歩容の変化について2次元動作解析ソフトを併用して捉え,さらに歩容変化の理由を考察するものであった.演習前後で歩行分析能力を評価した結果,演習前は歩行分析の内容が抽象的であったが,演習後は既習である歩行周期を実践的に用いた分析ができるようになった.また,歩行分析の精度が高い対象者は下肢の動きを運動連鎖の観点で分析し,かつ正常歩行や対側下肢の動きと比較しつつ捉えていた.これらのことから,疑似的ではあるが異常歩行を分析する演習の必要性は高く,さらに演習効果を底上げするためには運動連鎖の観点と,正常歩行からの逸脱や非対称性を捉えることで運動の異常性を解釈する視点を強化することが重要であると推論された.