2025 年 16 巻 1 号 p. 1_163
はじめに
毎年開催している取組報告会は,今年で第5回目となる.保健・医療・福祉の連携拠点として位置づけられている本学の機能のさらなる発揮に向け,本学の取組を報告し,県の健康政策担当者との意見交換を行った.以下に概要を報告する.
報告会の概要
日時:2024年11月7日(木)11:00~12:00
会場:県庁本庁舎11階 健康福祉部会議室
出席者:健康福祉部16名(岡田健康福祉部長,鈴木保健医療担当部長,井本次長,出浦次長,健康福祉政策課2名,健康づくり支援課2名,疾病対策課,高齢者福祉課,障害福祉事業課各1名,医療整備課4名)
保健医療大学13名(龍野学長,大川副学長,佐藤学部長他10名)
報告内容
1.大学の概要およびこれまでの取組と成果・卒業生調査結果について
将来構想検討委員長 河部房子,
自己点検・評価委員長 平岡真実
今年度の本学の取組について,「人材育成」「シンクタンク機能」「地域貢献」の観点から,令和5年度の実績および6年度の取組状況を報告した.また,昨年度実施した卒業生調査の結果について報告した.
2.主な取組の紹介
⑴ 研究的取組
リハビリテーション学科作業療法学専攻 成田悠哉
昨年度から継続して行っている「Covid-19前後の特定健康診査・後期高齢者健康診査のデータ解析から導出された健康指標の現状と課題 ―自治体との協働から―」について,結果の概要を報告した.
⑵ 専門職の質向上をはかる取組
看護学科 木内千晶,歯科衛生学科 酒巻裕之,
保健医療専門職の実践の質向上につながる取組として本学で実施している研修について,昨年の報告に引き続き,その成果を中心に報告した.
今後に向けた意見交換(抜粋)(進行;大川副学長)
1.「Covid-19前後の特定健康診査・後期高齢者健康診査のデータ解析から導出された健康指標の現状と課題 ―自治体との協働から―」結果について
・いすみ市のベースラインとして,生活習慣病リスクが高い原因は何か.自治体として解決・改善する手段があるか.県でも「健康ちば21」の中で「自然に健康になれる千葉県づくり」に取り組んでおり,自然に解決できる政策的なアプローチがあれば好事例だと思う.
⇒自治体との話の中で,飲酒習慣や味の濃さなど,食習慣が生活習慣病リスクと関連している可能性も挙げられていた.今後の関わりとしては,ほい大プログラムの継続やいすみ市で実施している健康フェアの広報を考えている.自然に健康になるというのは大事なので,今後の展開を検討していきたい.
・いすみ市の調査は他の自治体も関心が高いと思うが,他の自治体からのアプローチはあるか.また保医大以外の研究機関で似たような研究は行われているか.今後の展開はどう考えているか.
⇒千葉大学では,公衆衛生学領域で全国規模での調査を行っている.その研究に協力している県内の自治体もあり,研究参加を通して各自治体のニーズや施策を検討している.病院と自治体が協働して体力測定を行うなどの事例もある.いすみ市の課題は明確になったが,どう介入するかは今後の検討課題である.今後の展開として,本学が分析を全て行うのではなく,最終的には自治体の保健師や関連職種の方を中心とした取組とし,それに本学が協力していけるような仕組みを考えている.
・旭市と千葉大学,企業(ノボノルディスク)が行っている糖尿病予防の取組を,国のモデル表彰事業として千葉県から推薦したこともある.こちらも今後の展開によっては好事例になるかもしれないため,今後も情報交換をしていきたい.
・自然に健康になれる健康づくりという点で,まさにこの研究は,県が市町村から集めているデータを活用し自治体と協働して行っていただいており,非常にありがたい.これを市町村が独自に行うこと最終目的であるため,市町村への情報発信が重要である.今後,力になれることもあると思うので相談していただきたい.
2.地域包括ケアを担う看護職に対する実践能力向上プログラムについて
・独自にプログラムを検討されたという理解でよいか.病院の問題意識は高いと思われるが,今後普及する手立てをどのように検討しているか.
⇒ニーズ調査や先行研究をふまえ,本学が独自に開発したものである.今後の展開としては,プログラムのパッケージ化をはかり,臨床現場で看護師が研修を推進していけるような人材育成につなげたい.
・2つの研修について,同じ受講生が連続して受講するのか.パッケージ化について,例えば看護協会との連携や実現の見込みについてはどう考えているか.
⇒当初はそれぞれのニーズで研修を受けてもらうことを想定していたが,実施してみるとほとんどの対象者が両方の研修を受講していた.パッケージ化について,具体的な検討はこれからである.