抄録
潮間帯における生物種の調査は,観察報告,定性調査,定量調査など複数の手法が使われることがあり,またその同定精度も様々である.このため,異なる調査の結果を評価しようと試みても,その結果精度の信頼性が問われることが多い.
本研究では,後背湿地から前浜干潟にわたるさまざまな湿地をもつ千葉県木更津市の小櫃川河口干潟で,種の同定精度と調査場所を揃え,定量採集(コアサンプリングによる定量採集)と,観察と掘り返しという定性調査(「干潟生物の市民調査」手法)という2つの手法で得られる調査を比較することで,それぞれの調査の特性を明らかにした.また,その結果を対比するためのアグリゲートの手法についても議論し,分類群変更や誤同定の起こりやすい種を整理することの必要性を論じた.また,これらの調査のクラスター分析やnon-metric MDSといった群集構造解析結果が非常に近似しており,得られた群集構造に強い相関がある可能性を示した.