抄録
目的:サラゾスルファピリジン(SASP,sulfasalazine(SSZ)ともいう)又はブシラミン(BUC,bucillamine)を中心とした低分子疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)治療下で,抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)とリウマトイド因子(RF)の経時的変化を観察し,両指標とDMARDs治療効果の関係を確認する.
対象・方法:発症1年以内のRAをSASP開始群,BUC開始群の2群に無作為に割り付け,単剤で効果が不十分な例にはMTXを追加し,1年間の試験を実施した.EULAR(European League Against Rheumatism)基準を用いて経時的に有効性を評価するほか,投与0,1,3,6,9,12カ月後に抗CCP抗体,RFを測定し,治療効果との関係を検討した.継続が可能であった例には,更に1年間投与を延長し,観察を行った.
結果:除外例を除いた19例(SASP開始群:10例,BUC開始群:9例)のうち,効果不十分例であった7例(SASP開始群:5例,BUC開始群:2例)には,MTXを追加併用した.両群を合わせた19例における治療効果は,good response率63.2%,寛解率57.9%で,高い有効性が認められた.抗CCP抗体,RFの初期値と1,3,12カ月での変化率は,治療効果(寛解率,good response率)と相関がなかった.一方,RF(平均値)は3カ月後より,抗CCP抗体(平均値)は6カ月後より開始時と比較して有意に低下した.また,good response例では概ねRFと抗CCP抗体が低下していた.投与延長例では2年後まで,RF,抗CCP抗体,DAS28-CRP(3)の有意な低下が持続していた.
結論:発症1年以内のRAに対し,SASP,BUCを中心としたDMARD治療は,抗CCP抗体,RFを低下させ,低下がRAの疾患活動性を安定化させることが示唆された.近年のRA治療では,臨床的・構造的・機能的寛解が求められるが,両指標を用いた免疫学的寛解も目指すべきで,そこにSASP,BUC等のいわゆる免疫調節剤に分類されるDMARDsの使用意義があると考えられた.