臨床リウマチ
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誌説
総説
  • 中村 正
    2020 年 32 巻 4 号 p. 260-268
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     胸痛はありふれた症候で,いわゆるTietze領域に痛みを指で指し示すことができる範囲に腫脹と圧痛を認めればTietze症候群を疑う.一般に,第2・3胸肋関節や肋軟骨あるいは胸鎖関節などの領域に限局した疼痛と腫脹を伴う良性疾患の非化膿性病態で,原因は不明である.同部位の圧痛を来たす疾患の一群に,関節リウマチ,強直性脊椎炎,反応性関節炎,乾癬性関節炎などの脊椎関節炎,SAPHO症候群などのリウマチ性疾患がある.現状ではTietze症候群は独立した疾患とは考えにくく,ある種の全身性疾患や局所性疾患の異質な病態のひとつであるか,または特定の疾患の進行過程の一変化である可能性が高い.従って,リウマチ性疾患に関連したTietze症候群様病態への注意深い検討が望まれる.さらに,これらのリウマチ性疾患の炎症病態における標的分子が明らかになりつつあり,Tietze症候群の治療において分子標的薬の治療選択肢が広がる可能性がある.リウマチ性疾患を鑑別診断する過程でTietze症候群の再認識が求められ,今後の更なる症例集積や病態生理の解明が期待される.

原著
  • 吉井 一郎
    2020 年 32 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     投与前T-SPOT陰性にもかかわらず,肺結核を発症した関節リウマチ(RA)の一例を経験した.84歳 男性.初診時RA歴2年.SDAI13.0.MTX6.0mgより開始し,12mgまで増量する.腎機能低下を懸念し漸減すると疾患活動性活発化し,SDAI最大36.4まで上昇するため,初診後4か月にてバリシチニブ4mg開始となる.開始前スクリーニングにてT-SPOT陰性,胸部CTでは軽度の間質性変化あるも咳や喀痰排出はなかった.開始後疾患活動性は速やかに沈静化,開始後6週でSDAI寛解に至る.5か月後,全身倦怠感を訴える.胸部CTにて肺結核の所見,喀痰にてガフキー5号にて抗結核治療を開始.治療開始後は喀痰排出無くなる.バリシチニブは中止となり,プレドニゾロン7.5mgにてSDAI寛解維持出来ており,喀痰排出はない.バリシチニブ投与時は,特に高齢患者に対してはT-SPOTが陰性でも肺結核発症に細心の注意を払う必要がある.

  • 小川 法良, 米澤 春花, 畠山 真和, 大久保 悠介, 古川 省悟, 山﨑 賢士, 下山 久美子
    2020 年 32 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     64歳女性.X-28年,関節リウマチ発症.MTX投与を受け,X-16年にリンパ増殖性疾患を併発し,化学療法(R:リツキシマブ-CHOP)により軽快.X-6年トシリズマブ導入し,コントロールは良好となった.X年3月,TCZ投与8日後,右大腿部痛,腫脹が出現し,ショック状態にて入院.多臓器不全にて永眠した.血液培養にてStreptococcus pyogenes陽性であり,壊死性筋膜炎に続発した毒素性ショック症候群と考えられた.生物学的製剤治療中における重大な治療合併症と考えられ,文献的検討を加え報告する.

  • 松田 明子, 藤本 隆, 原 良太, 藤村 貴則, 青井 博志, 西浦 聡子, 萩野 浩, 田中 康仁
    2020 年 32 巻 4 号 p. 282-291
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)の治療は生物学的製剤の導入で格段に進歩し,看護師は,患者に応じた薬剤・リスク管理や臨床薬理学視点の観察が重要である.そこで看護師に対するRAの臨床薬理学に関する教育介入の効果を検討した.方法:対象はN県内の看護師52人,内訳はRA診療補助業務経験のある業務群39人,業務経験のない非業務群13人であった.教育内容は,①RAの病態と活動性の評価,②薬剤のリスク管理,③リスク管理(潜在的感染要因,ステロイド内服患者,手術),④添付文書の活用と観察点の4項目であった.介入は,リウマチ専門医と薬剤師により約2時間実施した.教育介入前後で,各項目に作成された設問(問題数は①3問,②8問,③8問,④4問の合計23問)について正答を記号で選択する方法により理解度を評価した.結果:ベースラインの2群間に正答率に有意な差はなかった.教育介入後,業務群では23問中16問(項目毎の内訳は①(1/3),②(5/8),③(6/8),④(4/4))において有意に正答率が増加した.一方,非業務群の教育介入後の正答率の増加は23問中2問(①(0/3),②(1/8),③(0/8),④(1/4))で確認された.結論:RAの臨床薬理学に関する教育は,RA診療補助業務経験のある看護師群でより効果があった.看護師に対するRA診療補助業務経験別に臨床薬理学および薬剤のリスク管理に関する教育が必要である.

誌上ワークショップ 膠原病・リウマチ性疾患の新規治療と展望
  • 亀田 秀人
    2020 年 32 巻 4 号 p. 292-296
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     成人Still病は発熱,皮疹,関節症状を主な症状とする原因不明の全身性炎症性疾患であり,16歳未満に発症した全身性若年性特発性関節炎の成人(16歳以上)移行例と成人(16歳以上)発症Still病を合わせた概念となっている.病態においてはマクロファージの活性化やIL-1β・IL-6・IL-18などの高サイトカイン血症が重要と考えられており,炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤の有用性が示されている.我が国では医師主導多施設共同治験(KCCR-D002試験)が行われた結果,2019年5月にはトシリズマブが成人Still病に世界に先駆けて適応追加承認を取得した.

  • 田村 直人
    2020 年 32 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis: AS)は,仙腸関節,脊椎など体軸関節炎を主病態とし,体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis: axSpA)に分類される.ASの炎症は付着部に始まり骨のびらん性病変をきたし,その後に長期の経過で骨新生がみられ,椎体は架橋され強直に至る.ASの早期治療介入を可能にするため,体軸性脊椎関節炎という分類名とその基準が提唱された.これにより,改訂ニューヨーク基準における「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial SpA: nr-axSpA)」が分類されるが,nr-axSpAは長期の経過でASに進展しないことも多い.ASでは,禁煙などの患者教育とストレッチや水泳などの運動療法が推奨される.薬物治療は,非ステロイド性抗炎症薬を投与し,効果不十分な場合には,末梢関節炎に対してはサラゾスルファピリジンが用いられることがあるが,メトトレキサートはASには無効とされ,体軸病変に対してはTNF阻害薬のインフリキシマブもしくはアダリムマブが用いられる.これらが一次無効の場合にはIL-17阻害薬に,二次無効の場合はもう一方のTNF阻害薬への切り替えが行われる.生物学的製剤は,ASの骨病変進行を緩徐にする可能性が示唆されている.海外ではTNF阻害薬,IL-17阻害薬はnr-SpAに対しても承認されており,国内ではIL-17阻害薬のみが適応を有する.さらに,ASに対するJAK阻害薬の治験が進行中である.

誌上ワークショップ 関節リウマチ precision medicineの可能性
  • 田中 良哉
    2020 年 32 巻 4 号 p. 304-309
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     生物学的抗リウマチ薬や経口JAK阻害薬の高い有効性は,関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療の向上に貢献してきたが,多種類の分子標的薬の使い分けが課題となっている.我々はマルチカラーフローサイトメトリーを用いて末梢血免疫細胞のフェノタイプを解析し,病態の把握,分子標的の妥当性の評価を試みてきた.乾癬性関節炎のように特徴的なサイトカインが病態に関与する疾患では,末梢血のリンパ球フェノタイプにより亜集団に層別化され,病態に合わせた分子標的治療の最適化が示唆された.全身性エリテマトーデスでは,IFN関連遺伝子発現の高い患者に於いてIFN標的治療が高い効果を示し,2つの亜集団に分類するだけで薬剤の選別を可能とした.非均一性の高い自己免疫疾患の治療では,分子標的薬の使い分けを目指す新しい治療体系,治療戦略の構築が不可欠であり,プレシジョンメディシンへの期待が大きい.

  • 岸川 敏博, 岡田 随象
    2020 年 32 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     ゲノム研究の進展は目覚ましく,世界各国で国家プロジェクトが進むなど大規模化が生じている.近年では研究成果を病態解明や創薬へと導く活用方法が模索されており,いよいよゲノム個別化医療時代が到来しようとしている.ヒト白血球抗原(HLA)はその代表的なものであり,例えば,一部のHLA遺伝子型は薬剤重症副作用リスクを有するため,薬剤投与前の遺伝子型検査が推奨されている.我々は,関節リウマチに関して,従来の古典的HLA遺伝子に加えて,非古典的HLA遺伝子が疾患リスクを持つことを同定した.また,非線形モデルによる機械学習によって,日本人集団のHLA遺伝子型が11パターンの組み合わせで構成されることを解明した.ゲノムワイド関連解析(GWAS)の個別化医療への応用においては,GWASで同定した疾患感受性一塩基多型に基づいて,将来的な疾患発症を予測する研究が報告されつつある.我々のグループは国際バイオバンク67万人の情報を解析することで,健康長寿バイオマーカーの同定に成功した.こうした個人の遺伝的リスクの指標を既知のリスク因子と統合して評価し,高リスク群を同定することで,予防医療の推進が期待される.関節リウマチの個別化医療としてはマイクロバイオームも注目されている.我々はショットガンシークエンスを用いたメタゲノムワイド関連解析によって,関節リウマチ患者由来の腸内微生物叢の特徴を明らかにした.

  • 古川 宏, 岡 笑美, 當間 重人
    2020 年 32 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)は関節破壊を引き起こす全身性炎症性疾患である.RAは関節病変以外にも関節外病変を伴う.関節外病変には間質性肺病変(ILD),気道病変(AD)のほかに,皮下結節,心外膜炎,胸膜炎,Felty症候群,血管炎などがある.種々の抗リウマチ薬や生物学的製剤は関節破壊抑制に極めて有効であるが,関節外病変には有効ではないものも多い.中でもRAの10%強に合併するILDは生命予後に重大な影響を及ぼしうることが知られている.RAに伴うILDは緩徐に進行することが多いが,時に急性増悪を起こすこともある.ILDの急性増悪には抗リウマチ薬などの薬剤やPneumocystis jiroveciiなどの感染症が関与している可能性もある.ILDの既存のバイオマーカーにはKL-6, SP-Dがあるが,これらはカットオフ値が特発性間質性肺炎も含めて設定されており,RAに関連するILDには低感度である.このため,RAに伴うILDのバイオマーカー開発は極めて重要な研究課題である.そこで,ゲノムDNAのほかにも,血中のサイトカイン類,アミノ酸などの代謝物,マイクロRNA(21-23塩基長のノンコーディングRNA),抗体,メタボロームなどを網羅的に測定し,RAに伴うILDの新規バイオマーカー候補の探索を行ってきた.その結果を報告する.

  • 藤本 穣, 仲 哲治
    2020 年 32 巻 4 号 p. 323-330
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
    ジャーナル フリー

     IL-6は炎症病変部に存在するさまざまな細胞で産生され,病変部ならびに全身の免疫応答の制御に関わる炎症性サイトカインのひとつである.多彩な機能をもつIL-6は,関節リウマチをはじめとする免疫疾患の病態形成に深く関与し,治療標的として重要である.IL-6は肝細胞におけるCRP等の急性期蛋白合成に必須の作用をもつため,IL-6阻害剤投与の効果はまずCRPの正常化にあらわれる.またIL-6阻害剤はSAA発現誘導も抑制するため,二次性アミロイドーシスの治療に有用と期待される.IL-6はB細胞系列の抗体産生を促進させるため,その阻害は自己抗体を含む抗体産生の抑制につながる.また,IL-6はTh17やTfh細胞の分化誘導に関わることから,IL-6阻害剤は獲得免疫応答の調節を通じて,免疫病態を改善させる可能性がある.これらの薬理作用は他のバイオ製剤とは異なるIL-6阻害剤の特性であり,IL-6阻害薬が幅広い免疫病態に適用される理由になると考えられる.しかしながら,他のバイオ製剤と同様に,IL-6阻害剤に応答しない難治症例が一定の割合で存在する.IL-6阻害薬をどのような病態に積極的に活用すべきであるか,効果予測のためのバイオマーカーが精力的に探索されているが,確立されたマーカーは現在のところ存在しない.また,IL-6阻害薬使用中の問題として,CRPなどの既存のバイオマーカーが正常化し,疾患活動性の評価や感染等の合併症の検出が困難になることがあげられる.われわれのグループが炎症バイオマーカーとして同定したLRG(Leucine-rich α2 glycoprotein)は,CRPで評価が困難な炎症病態の把握に有用であり,IL-6阻害剤使用時のバイオマーカーとして活用が期待される.

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