臨床リウマチ
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誌上ワークショップ 生物学的製剤時代のRA関節機能障害に対する手術治療戦略
関節リウマチ患者に対する生物学的製剤の使用による人工膝関節置換術後感染率と治療
田中 伸哉吉岡 浩之渡會 恵介木村 文彦野原 広明田中 啓仁河野 義彦金 潤澤織田 弘美
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2014 年 26 巻 3 号 p. 194-200

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抄録
目的:関節リウマチ(RA)患者の治療はこの数年で目覚ましく進歩し,人工関節置換術の併用により日常生活が著しく改善されたが,一方で術後感染の発生が危惧される.本研究の目的は1) RA患者では人工膝関節置換術(TKA)後の感染率が上昇するか否か,2) RA患者のTKA後感染の予測因子は何か,当施設におけるRAと非RAを対象にしたコホート研究から統計学的に明らかにし,さらに3) TKA後感染で治療難渋症例に対する工夫を紹介することである.
対象と方法:対象は2001年1月から2012年12月まで当科で初回TKAをおこなった394症例469関節.RA患者での深部感染率の上昇の有無,生物学的製剤(BA)使用およびグルココルチコイド (GC)使用による深部感染率上昇の有無を検討した.また,年齢,BA使用,GC使用を説明因子として多変量ロジスティック回帰解析をおこない,各因子のTKA後深部感染に対するオッズ比(odds ratio:OR)を求めた.P<0.05を有意とした.
結果:TKA後深部感染率は2.3%で,RA患者が3.37%,RA以外の患者が1.39%であった.RA 患者におけるTKA術後の深部感染率の上昇は明らかではなかった(p=0.095).また,BAおよびGC使用によるTKA後深部感染の発生率上昇は明らかでなかった(OR=2.67;95%confidential interval:CI;0.50~14.45,p=0.253,OR=5.11;95%CI;0.58~45.34,p=0.143).年齢1歳上昇に対するOR は1.04(95%CI;0.94~1.13,p=0.467)であった.
結論:RA患者ではTKA後の感染率上昇はあきらかでなかった.また,BAやGCの使用はRA 患者のTKA後感染の明らかな予測因子ではなかった.
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© 2014 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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