臨床リウマチ
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誌上ワークショップ リウマチ性多発筋痛症の診断と治療のトピックス
リウマチ性多発筋痛症におけるFDG-PET/CTによる画像診断の有用性と他の類似疾患との鑑別
山下 裕之
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2014 年 26 巻 3 号 p. 216-223

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抄録

   リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica;PMR)は,時に鑑別診断に苦慮することがある.我々は,FDG-PET/CTを用いて,PMRが坐骨結節・大腿転子部・脊椎棘突起に高いFDG集積を認め,それらの所見が2つ以上あるとき,感度85.7%,特異度88.2%であることを見出した.また,大血管炎症候群を有するPMR群と有さないPMR群に分けると,前者は滑膜炎や滑液包炎の所見に乏しい事が分かった.さらに,高齢発症血清陰性脊椎関節炎(SpondyloArthritis;SpA)のPET所見との比較も行ったところ,坐骨結節・大腿転子部・脊椎棘突起におけるFDG集積はSpAとPMR間で有意差はなく,前者は同部位の腱付着部炎,後者は滑液包炎を反映しているものと考えられた.一方,仙腸関節炎におけるFDG集積はSpAの方が有意に高く,鑑別に有用と考えられた.さらに時に鑑別が非常に難しい高齢発症関節リウマチ(Elderly-onset rheumatoid arthritis;EORA)のPET所見との比較を行ったところ,PMRはEORAに比較して坐骨結節,脊椎棘突起にFDG集積を高く認める傾向がある一方,手関節のFDG集積が低い事が分かった.さらに肩・股部のFDG集積を注意深く観察すると,EORAでは滑膜炎を反映し,上腕骨頭を取り囲む全周性かつ線状の集積が見られるのに対し,PMRでは滑液包炎を反映し,限局性かつ非線状の集積がみられる傾向にあっ.また,PMRでは,腸恥滑液包炎を反映した股関節前方の集積を有意に認める傾向にあり,非常に有意な鑑別材料と考えられた.今後,PETによる特徴的な罹患部位同定によりPMRの診断だけでなく,病態解明に近づくことを期待したい.

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© 2014 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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